トップページ ニュース 阿久悠 「リスペクトコンサート 君の唇に色あせぬ言葉を」公演レポート

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「リスペクトコンサート 君の唇に色あせぬ言葉を」公演レポート

イベント

開演前から客席には高揚感が漂っていた。会場となった東京国際フォーラム・ホールAに詰めかけた大勢の音楽ファン(2日間で約7,000人)が、歌謡曲黄金時代を築いた不世出の作詞家の「没後10年・作詞活動50年・生誕80年」のメモリアルコンサートを、今や遅しと待ち構えていたからだ。場内にはこの日の主役・阿久悠が残した未発表詞の中から、今年楽曲化された新曲10曲(11月15日にレコードメーカー8社が発売した全9タイトルのアルバムに収録)がBGMとして流され、間もなく開幕する歴史的祭典への期待をいやがうえにも盛り上げる。

やがて照明が暗転。ステージ上のスクリーンには在りし日の阿久の写真、続いて11月15日発売のトリビュート・アルバム『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』に収録された「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」の直筆歌詞が映し出された。いよいよ世紀の公演の始まりである。

16歳の天才ピアニスト・奥田弦の演奏に乗せて、リリー・フランキーが朗読する「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」は、数百篇に及ぶ未発表詞のなかの1作。生前の阿久は「ウォークマンの登場で、個人がイヤホンで音楽を聴く時代となり、歌が空を翔ばなくなった」と語っていたが、本作では「街や空を、ふたたび歌で満たそう」と綴っている。阿久の魂を歌い継ぐリスペクトコンサートの幕開けに相応しい作品といえるだろう。

そして舞台下手からトップバッターの歌手が登場。初日は八代亜紀の「舟唄」(79年)、2日目は岩崎宏美の「ロマンス」(75年)が歌唱されると、会場のボルテージは一気に高まった。以後は“圧巻”と形容するしかない名唱・名演の連続。なにせ紅白出場歌手が2日間で12組、そのうちトリ経験者が5組という豪華アーティストの共演だ。人気・実力を兼ね備えた一流の歌い手たちが、この日のために結成された阿久悠メモリアルオーケストラの壮麗な演奏のもと、自身の代表作を惜しげもなく披露してくれるのだから、テンションが上がらないわけがない。

しかもステージ中央に設置されたスクリーンには、時に直筆原稿を交えた歌詞が映し出されるため、お馴染みのヒット曲を口ずさみながら「この歌はこういう意味だったのか!」「4番があることを初めて知った!」という発見や驚きもある。歌詞と歌い手にスポットを当てたシンプルなステージは作詞家のコンサートならではの嬉しい演出で、観客は一気に阿久悠ワールドへと引き込まれた。

2日間で総勢20組のアーティストが延べ57曲(メドレー曲を含む)を披露した今回のリスペクトコンサートだが、存在感を示したのはやはりベテラン。曲間のトークでは、阿久との交流や、提供作品への想いが語られ、歌にも自然と力が入る。なかでも「この曲がダメなら歌手をやめようと思っていた。イメージチェンジを果たせた宝物のような曲」と語り、「どうにもとまらない」(72年)と「狙いうち」(73年)を往時と変わらぬパワフルなパフォーマンスで魅せた山本リンダや、「阿久さんとは一緒に飲んだ記憶しかない」と笑わせつつ、今やスタンダードナンバーとなった名曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」(72年)を熱唱した和田アキ子には割れんばかりの拍手と歓声が送られた。

もちろん、会場を沸かせたのはベテランだけではない。今回のコンサートにはオリジナル歌手のみならず、阿久の作品をカバーしたことがあるアーティストや、さらに次の世代へと継承していく若手の実力派も多数参加。その代表が、ピンク・レディーの増田惠子とのコラボで「UFO」(78年)を歌い、踊ったMAXの4人や、類まれな表現力で「ジョニィへの伝言」と「五番街のマリーへ」(ともに73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)を歌唱した新妻聖子だった。また若手実力派で俳優としても活躍する松下優也は、沢田研二の「勝手にしやがれ」(77年)と西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」(81年)をカバー。ペンライトを振る若いファンから黄色い歓声が飛ぶ一方、中高年世代からも大きな拍手が送られるなど、世代を超えた絆が生まれるステージとなった。

そしてもう1つ、今回のコンサートで特筆すべき点として、かつてのヒット曲・名曲のみならず、阿久の未発表詞による新曲も披露されたことも挙げておかねばなるまい。歌手生活48年目のベテラン・北原ミレイが歌う「恋は砂時計」(作曲:田尾将実/『阿久悠メモリアル・ソングス~私は話してみたかった』収録)、稀代のクリスタルボイスで“泣き歌の貴公子”とも呼ばれる林部智史が歌う「この街」(作曲:吉田拓郎/『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』収録)、東海地方出身のエンターテインメント集団、BOYS AND MENによる「友ありて・・」(作曲:都倉俊一/12月20日発売のアルバム『友ありて・・』収録)、そして本コンサートが初告知・初披露となった増田惠子の「最後の恋」(作曲:加藤登紀子/2018年2月CD化予定)。

4曲ともこのメモリアルイヤーに楽曲化されたホヤホヤの新曲だが、いずれも歌い手にマッチしたメッセージ性の高い詞で、「これぞ阿久悠!」と思わせる作品ばかり。当の阿久は他界して10年となるが、残された作品群は時代も世代も超えて、いつまでも色あせぬ言葉を唇に乗せてくれるに違いないと確信させてくれた。

「いつまでもこの場にいたい」。歌謡曲ファンならそう感じたであろうコンサートを締めくくったのは、初日は五木ひろし、2日目は森進一の両ベテラン。五木は阿久との初仕事で自身が作曲を手がけた「契り」(82年)を、森は同名映画の主題歌で日本作詩大賞を受賞した「北の螢」(84年)を熱く歌い上げ、まるで紅白歌合戦のエンディングのような感動をもたらした。

フィナーレは出演歌手全員がステージに登場し、初日は「青春時代」(76年/オリジナル歌唱:森田公一とトップギャラン)、2日目は「また逢う日まで」(71年/オリジナル歌唱:尾崎紀世彦)を観客とともに合唱。歌い手と聴き手が一体となったスペシャルイベントは熱気に包まれたまま幕を閉じた。

(文:濱口英樹)

<出場歌手MCより>(出演順)
八代亜紀
阿久先生に初めて書いていただいた作品が「舟唄」(79年)でした。そのとき「八代くん、僕は君と出会うまで9年間、助走をしてきたんだ」とおっしゃってくださったことが、とても嬉しかったです。

大橋純子
3時間ドラマの主題歌としてお話をいただいた「たそがれマイ・ラブ」(78年)はデビュー4年目だった私にとって初めてのビッグヒットになりました。当時、美乃家セントラルステイションというバンドと一緒に活動していた私は、従来の路線と違う作品に最初は戸惑いましたが、今では代表曲として大切に歌わせていただいています。

林部智志
11月15日に発売された『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』というトリビュート・アルバムで、阿久先生の未発表詞に吉田拓郎さんがメロディをつけて、武部聡志さんが編曲を手がけた「この街」という作品を歌わせていただきました。ビッグネームが並ぶプロジェクトに参加させていただいて大変勉強になりました。

MAX
97年にリリースされたトリビュート・アルバムのレコーディングで、阿久先生に初めてお目にかかりました。そのときもピンク・レディーさんの曲を歌わせていただいたのですが、優しく見守っていただいたことが今でも印象に残っています。

北原ミレイ
阿久先生には私のデビュー曲「ざんげの値打ちもない」(70年)を書いていただきました。そこから歌手・北原ミレイは始まりましたが、20周年のときに阿久先生から「あの曲は君と僕にとって(その後の人生の)分かれ道となる道しるべだったね」と言われたことが忘れられません。

石野真子
私がデビューするきっかけとなったオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)の審査員が阿久先生でした。当時17歳だった私にとってはおっかない存在で(笑)ご挨拶するのが精いっぱいでしたが、先生はいつも優しくて、お会いするたびに「元気か!?」と声をかけてくださいました。「わたしの首領(ドン)」(78年)という作品をいただいたときは、タイトルからして強烈なインパクトがあって「阿久先生はどういう思いで書いてくださったのかしら」と思った記憶があります。

ささきいさお
私が主題歌を歌った『宇宙戦艦ヤマト』(74年)というアニメは当時、視聴率が振るわず、打ち切りになってしまったのですが、再放送を重ねるうちに人気が出て、主題歌も大ヒットとなりました。先ほど楽屋で阿久先生の息子さんにお会いしたのですが、今8歳のお孫さんが『ヤマト』に夢中だそうです。

Char
阿久先生と初めてお会いしたのは僕が21歳のときでした。当時の僕はつっぱりまくっていましたが、阿久先生が「僕はザ・スパイダースやザ・モップスの詞を書いて作詞家になったんだ。だから久しぶりにロックの詞を書くことが楽しみだ」とおっしゃったことを覚えています。そうしてできた作品が「気絶するほど悩ましい」(77年)です。

新妻聖子
今回『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』というトリビュート・アルバムで「ジョニィへの伝言」(73年)を歌わせていただいたご縁で、この素晴らしいコンサートに参加させていただきました。「ジョニィへの伝言」も「五番街のマリーへ」(73年)も物語性の高い作品で、改めて歌詞を拝見したときに「お芝居の台本のようだな」と思いました。私なりに想像力を駆使して、阿久先生の作品と向き合い、取り組ませていただきました。

山本リンダ
デビュー曲「こまっちゃうナ」(66年)以降、イメージチェンジがなかなかうまくいかなかった私に、阿久先生と都倉俊一先生が書いてくださったのが「どうにもとまらない」(72年)という作品でした。この曲がだめなら歌手をやめようと思っていましたが、結果は大ヒット。私にとって宝物となりました。

ゴスペラーズ
阿久先生には98年に「BOO~おなかが空くほど笑ってみたい~」という作品を書きおろしていただきました。そのレコーディングで笑顔を見せてくださったことが忘れられません。今日は森田健作さんの「さらば涙と言おう」(71年)と小林旭さんの「熱き心に」(85年)を心をこめて歌わせていただきます。

和田アキ子
阿久先生にはデビュー曲「星空の孤独」(68年)以来、たくさんの詞を書いていただきました。残念ながら1位になった作品はありませんけど、「あの鐘を鳴らすのはあなた」(72年)は多くの方に長く愛されて、皆さんにとって心のナンバーワンソングになったんじゃないでしょうか。今日はめちゃめちゃ緊張していますけど、阿久先生への思いをこめて精いっぱい歌わせていただきます。

木の実ナナ
「居酒屋」(82年)はもともと五木さんのアルバム用に書かれた作品でしたが、私とデュエットすることになってシングルカットされました。ジャケットには私の写真しか使われていなくて、五木さんはクレジットだけなんですけど、発売された途端に大ヒット。今ではカラオケの定番曲になっています。

五木ひろし
五木ひろしという歌手は、山口洋子先生(作詞)と平尾昌晃先生(作曲)による「よこはま・たそがれ」(71年)で世に出ましたが、それから10年間、年末の音楽祭では常にライバル陣営の作品を阿久先生が手掛けていました。僕は「いつか阿久先生と仕事をしたい」と思っていましたが、その思いが実現したのが映画の主題歌で、僕自身が作曲をした「契り」(82年)という作品でした。

岩崎宏美
(ステージ上の)階段を下りてくるとき、阿久先生が審査員だった『スター誕生!』(日本テレビ系)の決戦大会を思い出しました。先生はデビュー曲「二重唱(デュエット)」(75年)以来、たくさんの詞を書いてくださいましたが、お亡くなりになる3ヶ月ほど前にラジオ番組でお会いしたんですね。そのときに「僕は君をどうやって成人にさせるかということを考えていたんだよ」という温かい言葉をいただいたことが忘れられません。

松下優也
僕はX4というボーカル&ダンスグループでも活動をしているのですが、そのX4の一員として出演した『うたコン』(NHK)で、沢田研二さんの「勝手にしやがれ」(77年)を歌わせていただいたご縁で、このリスペクトコンサートに参加させていただきました。これからも阿久先生の歌を歌い継いでいきたいと考えています。

増田惠子
阿久先生とは「ペッパー警部」(76年)でデビューして以来、ピンク・レディーの作品をたくさんかいていただきました。当時は忙しくてほとんどお話することができませんでしたが、お会いするたびに「ケイ、大丈夫か?」「ちゃんと食ベてるか?」と気遣ってくださいました。今は毎年、ご命日の8月1日には必ずお墓参りをして、先生といっぱいお話をしています。

BOYS AND MEN
今日は僕らのことを初めて見る方も多いと思いますが、阿久先生の未発表詞に都倉俊一先生が曲をつけた「友ありて・・」という作品を歌わせていただいています。僕らは2010年に名古屋で結成された10人組のグループですが、最初の頃はメンバー間で衝突することもたくさんありました。でも力を合わせてやってきて、今日、この大きなステージに立つことができました。その思いをこめて「友ありて・・」を歌わせていただきます。

石川さゆり
デビュー4年目に阿久先生に書いていただいた「津軽海峡・冬景色」(76年)で全国の皆さんに“石川さゆり”を知っていただきました。その「津軽海峡~」には「さよならあなた 私は帰ります」という詞があるのですが、当時としては自分の意思をはっきり示す女性像はとても新鮮でした。阿久先生の歌には時代を映したり、先取りをしたメッセージがいっぱい込められていたような気がします。

<公演概要>
『没後10年・作詞家50年メモリアル 阿久悠リスペクトコンサート 君の唇に色あせぬ言葉を』
会場:東京国際フォーラム・ホールA
日時:11月17日(金)17時開演、18日(土)14時開演
http://sunrisetokyo.com/akuyu-concert2017/

出演者:(※50音順)
17日(金)
石野真子、五木ひろし、大橋純子、北原ミレイ、木の実ナナ、ゴスペラーズ、ささきいさお、
Char、新妻聖子、林部智史、MAX、八代亜紀、山本リンダ、和田アキ子
18日(土)
石川さゆり、石野真子、岩崎宏美、大橋純子、北原ミレイ、Char、新妻聖子、BOYS AND MEN、
増田惠子(ピンク・レディー)、MAX、松下優也(X4)、森進一、山本リンダ

<セットリスト>
11月17日(金)
OP「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」朗読:リリー・フランキー
M1「舟唄」八代亜紀
M2「雨の慕情」八代亜紀
M3「たそがれマイ・ラブ」大橋純子
M4「時の過ぎゆくままに」林部智史
M5「この街」林部智史
M6「ピンク・レディー・メドレー Ver.A」MAX
「S・O・S」~「渚のシンドバッド」~「サウスポー」~「UFO」
M7「ざんげの値打ちもない」北原ミレイ
M8「恋は砂時計」北原ミレイ
M9「狼なんか怖くない」石野真子
M10「日曜日はストレンジャー」石野真子
M11「宇宙戦艦ヤマト」ささきいさお
M12「時代おくれ」ささきいさお
M13「闘牛士」Char
M14「気絶するほど悩ましい」Char
M15「五番街のマリーへ」新妻聖子
M16「ジョニィへの伝言」新妻聖子
M17「どうにもとまらない」山本リンダ
M18「狙いうち」山本リンダ
M19「さらば涙と言おう」ゴスペラーズ
M20「熱き心に」ゴスペラーズ
M21「笑って許して」和田アキ子
M22「あの鐘を鳴らすのはあなた」和田アキ子
M23「居酒屋」五木ひろし&木の実ナナ
M24「契り」五木ひろし
M25「青春時代」出場歌手全員

11月18日(土)
OP「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」朗読:リリー・フランキー
M1「ロマンス」岩崎宏美
M2「思秋期」岩崎宏美
M3「勝手にしやがれ」松下優也
M4「もしもピアノが弾けたなら」松下優也
M5「最後の恋」増田惠子
M6「ざんげの値打ちもない」北原ミレイ
M7「北の宿から」北原ミレイ
M8「失恋記念日」石野真子
M9「わたしの首領(ドン)」石野真子
M10「逆光線」Char
M11「気絶するほど悩ましい」Char
M12「どうにもとまらない」山本リンダ
M13「狙いうち」山本リンダ
M14「フィンガー5メドレー」BOYS AND MEN
「恋のダイヤル6700」~「個人授業」~「学園天国」
M15「友ありて」BOYS AND MEN
M16「たそがれマイ・ラブ」大橋純子
M17「五番街のマリーへ」新妻聖子(
M18「ジョニィへの伝言」新妻聖子(
M19「ピンク・レディー・メドレーVer.B」MAX
「カルメン`77」~「ウォンテッド(指名手配)」~「ペッパー警部」
M20「UFO」増田惠子 & MAX
M21「能登半島」石川さゆり
M22「津軽海峡・冬景色」石川さゆり
M23「さらば友よ」森 進一
M24「北の螢」森 進一
M25「また逢う日まで」出場歌手全員

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