トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その⑧ 表参道・原宿

東京レコード散歩 その⑧ 表参道・原宿

東京レコード散歩 その⑧ 表参道・原宿

文/鈴木啓之(アーカイヴァー) 

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名曲「風の街」の中で風が運ぶ街と歌われた表参道

青山通りから六本木通りへと通ずる骨董通りは、古くは高樹町通りと呼ばれ、都電が走っていた。次第にアンティークショップが増えていったことから呼び名が変わり、80年代になって今の名称を広く定着させたのは、テレビ東京『開運!なんでも鑑定団』でお馴染みの中島誠之助氏といわれている。70年代から80年代にかけて、その通り沿いにあったのが、小さな輸入レコード店「パイドパイパーハウス」である。経営者が音楽関係者だったこともあり、業界人の出入りも多かったと聞く。店内にカフェスペースが設けられたスタイルも、当時は画期的だっただろう。

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伝説の輸入レコード店「パイドパイパーハウス」跡地

跡地の正確な場所が判らなかったため、付近で一番古そうな写真館に入ってご主人に問うと、「ウチのすぐ横の角でしたよ。しかしこの通りも昔からの商店はほとんど無くなっちゃって…」と、話は最近の都市開発についての嘆き節へと展開していった。念のため近くの印章店でも確認するとやはり間違いない。通りに入り、六本木方面へ向かってちょっと進んだ右側。現在は瀟洒な洋服屋さんになっており、試しに店の人に尋ねてみたら、「ウチは去年開店したばかりで昔のことは全然判らないんです…」と、非常に丁寧な応対に恐縮する。パイドパイパーハウスの開店は75年だったというから、まだ輸入レコードが簡単に入手出来なかった時代、この店のお世話になった方は多かろう。
そういえば、ある先輩コレクターから聞いた話では、遥か昔、表参道にも「ハンター」があったそうで、その頃は中古盤は古ければ古いほど安かったという。「ビートルズやビーチボーイズのシングルなんて1枚50円で売ってたよ」なんて羨ましい話も。少なからず誇張もあるかもしれないが、80年代初頭の廃盤ブームより前、中古レコードの世界はかなり平和であったことは想像がつく。

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同潤会アパートの名残を感じさせる表参道ヒルズ

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江戸時代から遺るという石垣

聖地巡礼を終えて青山通りの表参道交差点まで戻り、原宿方面へと歩く。少し行くと右側に表参道ヒルズが見えてくる。一番手前にはかつて同地にあった同潤会アパートの建物が再現された棟があって懐かしい。その前辺りから、流行になって久しいポップコーン屋さんの行列が出来ており、さらに進むと今度はパンケーキ店の行列が。日本人は本当に辛抱強い民族だ。
通りの反対側、江戸時代から遺るという石垣を擁したビルには、以前トーラスレコードがあった。早見優やテレサ・テンが所属していたレーベルで、何回か訪ねる機会があった。この辺りを歩く度に、山田パンダの歌う「風の街」を思い出す。郷ひろみや桜田淳子が出ていた『あこがれ共同隊』というドラマの主題歌で、内容こそよく憶えていないものの、表参道と原宿の地名が歌詞に登場するこの歌は、昔から変わらない欅並木の風景と共に記憶の底に刷り込まれている。

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現在の原宿ペニーレーン

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70年代の原宿ペニーレーン

ビクターの社名がまだ”ビクター音楽産業”だった時代のお膝元、原宿ピアザビル2Fのカフェで休憩。かつてビルの前にはビクター犬として知られるニッパー君の銅像があり、三越のライオンよろしく待ち合わせ場所に使ったものだった。甘いものを食べて体力を取り戻した後、再び聖地巡礼に臨む。吉田拓郎の歌でお馴染みの「ペニーレイン」のあった場所はすぐ見つかった。現在は飲み屋さんとなって繁盛しており、その並びの何軒か先にはペニーレインの名を掲げた店もあったが、直系の店なのだろうか。一応写真に収めて表通りに戻る。
多くの店が移り変わる中で、キディランドやシェイキーズといった昔からある店の健在に安心を覚えつつ、今日も賑やかな神宮前の交差点を右折して今も昔も人の波が絶えない竹下通りへ。この通りには岡崎友紀主演のドラマ『ラブラブライバル』の舞台となったレコード店「メロディーハウス」が実在していた。こちらも現在は洋品店になっている。

DSCN0192原宿で最後に訪ねたのは、駅前に聳えるマンション「コープオリンピア」。竣工の前年に開催された東京オリンピックに因んだ名称だそうだから、間もなく築50年を迎える。都内の大型高級マンションのハシリだ。建て替えの話もあるようだが、モダンで風格ある造りの建物を失うのは余りにも惜しい。地下にある中華料理店「南国酒家」は竣工時から営業を続ける老舗で、人から「いい中華屋さんない?」と聞かれた時には迷わずここを薦める様にしている。30年程前、ここに住まわれていた近江俊郎先生の部屋を訪ねたことを想い出した。

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昔から変わらない駅舎が印象的なJR原宿駅

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表参道/NAC (昭和49年)
ストレートなタイトル。当時流行っていた「神田川」などとは対照的な、ブルジョアな匂いのするフォークソングである。東海林修によるアレンジも洗練されている。原宿は恋の街。

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風の街/山田パンダ(昭和50年)
TBSで放映された青春ドラマ『あこがれ共同隊』主題歌。喜多条忠の作詞、吉田拓郎の作曲。ドラマは郷ひろみ、西城秀樹、桜田淳子、浅田美代子らの出演。せんだみつおも出ていた。

trs8 表参道軟派ストリート

表参道軟派ストリート/水谷 豊 (昭和53年)
水谷豊の歌は台詞が大きな特徴。阿木燿子=宇崎竜童コンビの作による軽快なこの曲でも独特の豊節を聴かせてくれる。歌詞には大阪の難波が登場し、ナンパと引っ掛けている。

trs8 それぞれの原宿

それぞれの原宿/ロス・インディオス&シルヴィア(昭和55年)
「別れても好きな人」を大ヒットさせたロス・インディオスが、続けてシルヴィアと共に放ったヒット曲。作曲の中村泰士はポップス調の演歌やムード歌謡に抜群のセンスを発揮。

trs8 原宿キッス

原宿キッス/田原俊彦(昭和57年)
デビュー3年目、人気絶頂のトシちゃんが筒美メロディを歌う9枚目のシングル。コーラスはEVE。当時は日曜日となると、原宿の歩行者天国や代々木公園で竹の子族が踊っていた頃。

trs8 逃避行

逃避行/麻生よう子(昭和49年)
レコード大賞最優秀新人賞を受賞したデビュー・ヒット。都倉俊一作曲。千家和也による歌詞には特定の地名は登場しないが、ジャケをよく見ると特徴ある原宿の駅舎が写っている。

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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