トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その⑨ 上野

東京レコード散歩 その⑨ 上野

東京レコード散歩 その⑨ 上野

文/鈴木啓之 (アーカイヴァー) 

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昭和26年製作、JR中央改札口の大壁画

東京の北の玄関口である上野は、正直オシャレさは皆無といってよさそう。しかしなんでもオシャレでカッコよければよいというものではないだろう。大正漢方胃腸薬のCMで「食べる前に飲む!」と叫ぶのは小栗旬よりも田中邦衛の方がずっと説得力があるように、東京も青山や六本木みたいな街ばかりでは味気なく、上野のような大衆的な繁華街があってこそ面白い。

昔からさほど街並みは変わっていないが、10年ほど前、西郷口にあった上野東宝などの昔からあった映画館が閉館してしまったのと、その並びのレストラン「聚楽」の旧館が見られなくなったのが唯一の残念。地下の松竹ビデオショップ跡で営業していた古本屋さんの集合体も無くなってしまった。西郷さんの銅像はすぐ目の前、そこから桜の名所である上野公園や不忍池、そして美術館や動物園へと連なる不動の人気スポットについては今回はパスさせてもらい、アメ横から広小路にかけての一帯を歩くことにする。

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ああ上野駅

昭和26年に製作されたという、JR中央改札口の大きな壁画前からスタート。猪熊弦一郎作の「自由」と題されたその絵は、もう60年以上も同じ場所から北の旅人たちを見つめ続けてきた。 丸井側、広小路口の広場にある「あゝ上野駅」の歌碑は平成15年建立とまだ新しく、昨年(=25年)には、上野駅開業130周年を記念して13番ホームの発車ベルにも採用された。集団就職の時代を象徴する歌として昭和39年に出された「あゝ上野駅」は当時の若者を大いに勇気づけ、想い出の一曲に挙げる人も多い。その頃の風景が再現された映画『ALWAYS 三丁目の夕日』では、駅舎の精巧なミニチュアが効果的に使われていた。

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上野の中古レコード屋といえば蓄晃堂

広い横断歩道を渡ったところにある玩具の「ヤマシロヤ」はいつも通りかかると寄ってしまう店。今日もフラッと立ち寄って地下へ降りると、最近のヒット作であるコップのフチ子さんがズラリと並んだコーナーが目に飛び込んできた。ほかには懐かしいキャラクター商品も多数展開されており、ここらのターゲットは明らかに子供ではなく大人であろう。そこからほど近い蓄晃堂は昔からある中古レコード店。ここではフォークルの「イムジン河」が500円位で売っていたのを買い逃した苦い想い出がある。それとてもう四半世紀前の話(ちなみに次にとある中古店で出くわした時にはその100倍以上の値がついていた)。この日は久々に物色するも残念ながら何も買うものは無く店を出る。

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ドラマ『あまちゃん』のロケ地、アメ横センタービル前

年の瀬ということもあって、いつも以上に賑わうアメ横を歩く。ここの風景は最近ケバブ屋が増えた以外、さほど変わりはない。奇跡的に古い佇まいの喫茶店「丘」を訪ねたら、平日の昼間にも拘わらずシャッターが下りていてちょっと心配になった。大丈夫だろうか。気を取り直して『あまちゃん』のロケ地、アメ横センタービルの前で撮影タイム。ケバブ屋が増えたのはあまちゃんに登場する「まめぶ対ケバブ」のエピソードの影響も大きそう。その後、これまた久しぶりにのぞいた雑貨店「ガラクタ貿易」で、ここまで何も買っていなかった反動からか、BIG BOYの人形を衝動買いしてしまった。家にあるカーネルサンダースの人形と並べて飾ろう。付近の音盤屋さんではもう一軒、ミリタリー専門の中田商店の並びにある演歌系CDショップ「リズム」がある。間口一軒の小さな店ながらも、宣伝用の等身大パネルが高いところに並べられたりして、相変わらずの存在感を放っていた。

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『喜劇 とんかつ一代』のモデルになった老舗とんかつ屋

アメ横を抜けるとJR御徒町駅。御徒町という町名は「あゝ上野駅」がヒットした昭和39年に廃止されたが、駅名として残り現在に至る。駅前のデパート「吉池」のビルは最近新築されたばかり。以前の建物も昭和の風情があってよかった。たしか寄席もあった筈。地下鉄銀座線の上野広小路駅がある西側はさらなる賑わい。松坂屋から中央通りを挟んだ向かいの裏手にある老舗のとんかつ店「井泉」を目指す。以前その屋号で多くの支店を展開していた系列の店は表参道の本店をはじめ、みな「まい泉」となったが、元祖は今なお健在。久しぶりなので少々道に迷っていたところ、たまたま声をかけてきたキャバクラの店員さんに道を尋ねると、「美味しいですよねー。私も月に一度は食べに行きますよ」と親切に案内してくれる。ゴージャス松野似のいかにもベテランのお兄さんに教えられた通りに歩くと、ほどなく店へ辿り着いた。ここは川島雄三監督が昭和38年に撮った『喜劇 とんかつ一代』のモデルになった店で、映画も上野界隈を舞台に展開される。

以前、大井町にあった大井武蔵野館で初めて映画を観た後、わざわざ足を延ばしてとんかつを食べたことがあった。今回は時間の都合で店には入れなかったので近々にまた足を運ばなければ。森繁が歌う映画の挿入歌「とんかつの唄」は独特の節回しで、一度聴いたら忘れられない不思議な歌である。

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あゝ上野駅/井沢八郎(昭和39年)
上野といえばこの歌。東京のご当地ソングでも五指に入るだろう。題材となった集団就職の時代は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にも活写された。台詞入りと無しの2ヴァージョン有。

trs9 ああ上野駅

ああ上野駅/井沢八郎(昭和60年)※新装盤
東北・上越新幹線の上野駅が開業した際の記念盤。オリジナルのモノラル音源に疑似ステレオ化が施された。タイトル表記が「あゝ」から「ああ」になっているところに時代の変化が。

暦の上ではディセンバー

暦の上ではディセンバー/アメ横女学園芸能コース(平成25年)
NHKの朝ドラ『あまちゃん』から生まれた劇中歌。AKBの秋葉原に対抗して、上野アメ横が本拠地という設定だった。ジャケットは『あまちゃん歌のアルバム』に同梱されたもの。

trs9 とんかつの唄

とんかつの唄/森繁久弥(昭和38年)
川島雄三監督『喜劇 とんかつ一代』の挿入歌。B面はフランキー堺。映画は上野が舞台で、とんかつ店のモデルとなったのが井泉だった。細野晴臣と鈴木慶一がカヴァーしている。

trs9 パンパカパンダ

パンパカパンダ/小松方正(昭和47年)
この年、日本の上野動物園にやってきたパンダはたちまちブームに。カンカンとランランは国民的人気者となってレコードもたくさん出された。穂口雄右作曲によるロックン・パンダ。

trs9 かわいいパンダ

かわいいパンダ/キャロライン洋子(昭和48年)
数あるパンダレコードの中でもキューティーな一枚。パンダのイラストもファンシーだ。作曲は小林亜星先生。小松方正とキャロライン洋子は『ゲバゲバ90分!』つながりでもある。

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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