トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その⑯ 錦糸町

東京レコード散歩 その⑯ 錦糸町

東京レコード散歩 その⑯ 錦糸町

文/鈴木啓之 (アーカイヴァー) 

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城東地区最大の繁華街、錦糸町

東京の西側で生まれ育った私は東側の街にはとんと疎い。今回訪ねた錦糸町も幼い頃には未知の土地で、30年ほど前に楽天地へ行ったのが最初。その後またとんとご無沙汰してしまい、今回は何年ぶりだろう。通算でもまだ4~5回位しか訪れたことがない街なのですっかり不安になっていたところに朗報が! 中野の回でも同行して下さった女性プロデューサーのHさんが地元ということで、急遽駆け付けてくれることになった。これは心強い味方だ。さらに同行のT氏も実家はこちらの方らしいので頼りっ放しの散歩になりそう。

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創業65年の老舗レコード店「関根楽器」。横に「魚虎」、奥に「丸井」

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壁一面に並んだミュージックテープ

DSCN1642駅改札で合流した我々は、まず駅前にある「セキネ楽器店」を訪ねる。この連載を読んで下さっている楽天地に長年お勤めの年長の知人が先回りして、店のご主人に話をしてあるとのこと。そもそも今回錦糸町を訪れたのはその連絡をいただいたのがきっかけとなった。若いご主人は三代目だそうで、創業65年になるとのこと。そもそもは看板通り楽器屋さんだが、現在は音楽ソフト、それも演歌に主軸が置かれている。決して広くはない店内ながら、駅前の好立地ゆえ、毎日のように演歌系の歌手がキャンペーンに訪れて店頭で歌う。壁にはベテランから新人まで、思い付く限りの現役演歌歌手のポラが貼られていた。さらに壮観なのは奥の壁一面に並んだ夥しい数のミュージックテープ。年配の方はCDプレーヤーをお持ちでないという。CD不況が嘆かれる昨今、一方では全く別次元の市場が形成されているのだ。CDが売れないとか、最近またカセットが熱いなどと騒いでいるのは、未熟な我々のほざきに過ぎないのかもしれない。何か買うものはないかと物色した挙句、カセットでしか持っていなかった「東京スカイツリー音頭」があったのでこの機会に買っておいた。

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錦糸町のシンボルと言えば楽天地

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五線譜に注目!

ご主人に礼を言って店を出ると、隣は魚屋さんというのがいかにも下町らしい。「魚寅」という店は京葉道路を渡ったところにも別店舗があり、いずれも昼間から繁盛している。美味しそうな切り身が目に入ったが、さすがに鮮魚を何時間も持ち歩くわけにはいかないので我慢する。すぐ横の丸井はこの辺りでは古株に属する商業施設のひとつであろう。歩道橋を渡って楽天地ビルに向かう。初めてここに来た時はまだ建て替え前のビルだった。何かのイベントで古い映画のポスターが販売されると聞いて遥々買いに来たのを憶えている。今ではとても綺麗になったが、入口にある”楽天地”の文字が古い東宝のポスターにデザインされていた五線譜で囲まれているのが昭和っぽくていい。そう、ここはかつて阪急東宝グループを創設した大事業主・小林一三の発案によって昭和12年に誕生した娯楽の殿堂であったのだ。メインの江東劇場は映画と実演の定期興行が都内で最初に実施された映画館だそうで、美空ひばりや田端義夫をはじめ、多くのスターがステージでショーを繰り広げた。戦後はさらに発展を遂げ、31年には天然温泉、35 年には店内に噴水を擁した大型キャバレー「グランド・フォンテン」、39年にはボウリング場と、高度経済成長の波に乗って隆盛を極めたという。名称も36年に江東楽天地から東京楽天地に改められている。今はキャバレーもボウリング場も跡形もないけれども、もっと早く生まれていたら、「グランド・フォンテン」には是非とも行ってみたかった。しかし今は今で昭和の頃とはまた違う歓楽街が栄えているのだから、別の機会にまた来なければ。錦糸町は夜の顔も面白いに決まっている。

DSCN1672DSCN1674線路をくぐって駅の北側へ。右手にあるロッテシティ(旧・ロッテ会館)を過ぎるとすぐに錦糸公園が見えてくる。野球場、テニスコート、体育館も備えた大きな公園は、地元の方たちの憩いの場として快適そう。家が近いHさんもよく訪れるとのこと。再び駅の方へ戻ると、バスターミナルに「すみだトリフォニーホール」の案内があり、この日は安田姉妹(安田祥子・由紀さおり)のコンサート告知が掲示されていた。ここ、いいホールなんですよね。そのすぐ前のショッピングビル、アルカキットに入っている新星堂へ行ってみると、このご時世にも拘わらず充分な広さの売り場であった。向かいには大きな書店も。錦糸町、なかなかよい環境ではありませんか。これは少々見縊っておりました。反省しなければ・・・。公園と小学校に挟まれた区域をぐるぐると廻った後、前に一度訪ねたことのある珈琲専門店「トミィ」へ。昼下がりの時間、我々のあとにも次々にお客さんがやって来て、しばらくすると満席になった。サイフォンコーヒーとホットケーキのお店なのでもちろんホットケーキをいただいて一休みする。甘すぎず素朴な味にホッとした。シャレではなく。

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昭和風情を今に残す珈琲専門店「トミィ」

そういえばこの近くだったろうか、以前、楽天地の知人に連れて行ってもらったバーに、ラテンの先生と呼ばれている方がいて、陽気なドン・カミロという感じの特徴ある風貌でぐいぐいと絡まれた後、いただいた名刺には“カルロス大島(大島四郎)”の名が。その字面になんとなく見覚えがあると思ったら、梓みちよ「だけど愛してる」や、ロス・インディオス「アディオス東京」などを作られた大ベテランの先生で驚いたことがある。もう10年位前になると思うが、今もお元気だろうか。やはりその頃行った駅南のライブ・レストラン「38」は、ザ・サベージの渡辺昌宏さんがプロデュースされていて、来訪時にはワイルド・ワンズの島英二さんらと一緒のステージを観た。現在は同じ様にオールディーズを聴かせる「ヒューズボックス」として盛業中のようだ。そんなわけで、意外にも(失礼!)文化の香り高き街を満喫した我々一行は、老舗のレコード店「天盛堂」がある隣町の亀戸へ移動しようとしたところ、その日はあいにく定休日であることが判り、急遽、逆方向の隣駅である両国を目指すことにした。

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駅前シリーズの7作目「喜劇 駅前女将」の舞台となった錦糸町。ぜひDVDでご確認を

trs16 錦糸町ブルース

錦糸町ブルース/三島敏夫とそのグループ(昭和44年)
松浦ヤスノブのテナーサックスに乗せて歌われるムード・コーラス。カップリングは九条万里子がオリジナルの「すすきのブルース」。三島はマヒナ・スターズの初期メンバーだった。

trs16 楽天地ブルース

楽天地ブルース/大島ひろみ(昭和44年)
奄美出身の大島ひろみは41年にビクターから島唄でデビュー。ポリドール移籍後は、「夜の谷間のブルース」「夜を流れて」など、女版・森進一ともいえそうなブルース演歌を歌った。

trs16 錦糸町の女(かしまちかこ)

錦糸町の女/かしまちかこ(昭和48年)
コロムビアの“PES”品番は自主盤。地元で活動していた歌手だろうか。尽くした挙句、男にフラれてしまった女の嘆きぶし。B面曲では故郷が偲ばれる。茨城出身なのかもしれない。

trs16 はしご酒

はしご酒/藤 圭子(昭和50年)
藤圭子といえば新宿のイメージだが、レコードデビュー前は、錦糸町で流しをしたこともあるという。亀戸~平井~小岩~押上~金町、下町のはしご酒は、さながら“恋の総武線”。

trs16 錦糸町の女(長山洋子)

錦糸町の女/長山洋子(平成9年)
平成の錦糸町の女は、男を騙したズルイ女であると独白する。時代は変わり、女も強くなったのだ。収録アルバム『二十九才~旬~』には西を舞台にした「茶屋町の女」という曲も。

trs16 だけど愛してる

だけど愛してる/梓みちよ(昭和44年)
ヒットした「渚のセニョリーナ」以降、ラテン風味の歌謡ポップスを展開していた頃の一枚。作曲のカルロス大島こと大島四郎は2008年に江戸東京博物館でコンサートを開いている。

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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