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東京レコード散歩 番外編 横浜(前篇)

東京レコード散歩 番外編 横浜(前篇)

文/鈴木 啓之 (アーカイヴァー) 

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みなとみらい横浜、臨港パークや大観覧車を臨む

東京に極めて近く、歌謡曲の舞台にも頻繁に採りあげられる街、横浜。今回は「東京レコード散歩」の番外編として、横浜の街へ散歩に出かけた。 まずは桜木町駅からスタートする。今やみなとみらい地区といった方が通りがいいこのエリアだが、臨港パークや大観覧車を臨む開放的な海側とは逆の野毛界隈は、昔ながらの商店や飲み屋街が連なり、まだまだ昭和っぽい風景が遺っている。日本三大大道芸のひとつに挙げられる“野毛大道芸”も有名。

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横浜といえばシウマイ。弁当の包装紙にも歴史が

駅改札前の柱にいくつか設置されたパネルケースで、古いシウマイ弁当の包装紙や1989年に開催された横浜博覧会の資料展示を見てすっかり懐古モードに切り替わったところで、野毛方面に足を向ける。以前から気になっていながらなかなか訪れる機会のなかったアンティークショップへ行ってみることにした。ちょっと裏通りに入って、だいぶ前に名物の餃子を食したカウンターメインの中華料理店や、いい感じに煤けた小料理屋など、昼間なのでまだ開店前の飲食街を横目に見つつ10分ほど歩くと、目的の店は案外容易に見つかった。「昭和堂」というその古物店は、60~80年代の玩具や雑貨、レコードなどが程よく並べられており、70年代くらいに青春を過ごしたであろうと思われる男性店主が帳場に座っていた。結構量のあるレコードを丹念に見て、驚くほどのレアものこそなかったが、シングル盤を数枚購入。それと三ツ矢サイダーの景品で秋吉久美子がいい笑顔で写っているコースターセットを買えたのはちょっと嬉しかった。状態も極美。「ウチは安いでしょ。いっぱい買ってね」という店主の言葉通り、全体的に良心的な価格だったのが有り難い。

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昭和好きなら行く価値ありの「昭和堂」

再び駅まで戻り、今度はランドマークタワーの麓を歩く。にっぽん丸に併設されたミュージアムでは、アンクルトリスのイラストレーションでお馴染みの柳原良平展を開催中だった。ここは先日訪れたばかり。アンクルトリスといえば、アイ・ジョージが歌った「トリスでドドンパ」という相当にイカした歌がある。かなり昔、宣伝用の非売品レコードかと思って中古盤店で手にいれたら、一般流通の市販品シングルと知って驚いたことがある。その展覧会でも飾られていなかった珍品である。湾岸の絶景を見ながらワールドポーターズへ。以前は建物内の駄菓子や小物を売る懐かし昭和コーナーに、映画の資料やレコードを扱う店があり、それこそ良心価格でたまに訪れていたのだが、数年前に都内へ移転してしまってからは訪れる機会がめっきり減ってしまった。前からあるヴィレッジヴァンガードとHMVが健在でホッとする。新しく出来る商業施設に書店やCDショップが置かれずに愕然とさせられることが多い昨今、さすが横浜は文化レベルが高い街である。

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元は保税倉庫だった赤レンガ倉庫。今では観光名所の一つ

ワールドポーターズの中を横切る様にして、赤レンガ倉庫へと移動。前年はここで行なわれたイベントで、かつて南青山にあった伝説のレコードショップ、パイドパイパーハウスが復活して話題となったが、今は渋谷のタワーレコード内に期間限定で出店されて、店主の長門さんが実際に店頭に立ったり、ナイアガラ系や渋谷系のイベントが行われたりしている。なんと幸福な時代なのだろう。若者よ音盤を抱けといいたい。赤レンガ倉庫内にはライヴレストラのモーション・ブルー・ヨコハマがあり 自分も度々訪れている。女性ミュージシャンだけで構成されたビッグバンド、たをやめオルケスタのライヴを観た時には、その日のためにアレンジされたという「ブルー・ライト・ヨコハマ」のダイナミックな演奏に感激しきりだった。
夏場になると屋外でも様々なライヴが催される機会が多く、レコード屋こそ付帯していないが音楽との結び付きは意外と深い施設なのだ。見晴らしのいい場所でベイブリッジの写真を撮ったりしてすっかり観光気分に浸った我々(今回もT氏が同行してくれた)は、少しの間だけ船に乗ってみることにした。いよいよ歌謡曲との縁が深い山下公園方面へ向かおうと歩いている時に、たまたまシーバス乗り場の前を通りがかり、咄嗟の思いつきで決めたほんの少し贅沢な移動手段。歩いても移動出来る距離ではあったが、これが結果的にすこぶる気分のよい海上散歩となったのである。

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山下公園のシーバス停泊所からニューグランドホテルとマリンタワーを臨む

岸から離れたシーバスは一旦沖まで出た後、地上ではさほど遠くない距離をゆっくりと旋回して次の停泊所である山下公園へと誘ってくれた。シーバスを降りるとほぼ正面には歴史と伝統を誇るニューグランドホテルが聳え立つ。この日は中には入らなかったが、一部改修工事中の様子であった。1926(大正15)年に設立され、数々の著名人が逗留してきた名門ホテルは、終戦後に連合国最高司令官のダグラス・マッカーサーが滞在したことでも知られる。いろんなものが発祥の地である横浜でここもまた例外にあらず、ドリア、ナポリタン、プリンアラモードはいずれもニューグランドのレストランから始まったという。
さらに、サザンオールスターズ「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」にも登場するバー、シーガーディアン(現在はシーガーディアンⅡ)もある。シェリー酒を使った特製のドライマティーニは食通で有名だった作家の池波正太郎や大スターの石原裕次郎らに愛され、ホテルの一室を仕事部屋にしていた大佛次郎もよくバーを訪れたそうである。そして目の前に広がる山下公園は数々の歌謡曲の舞台になっている名所。童謡「赤い靴」のモデルとなった少女の像があるのは有名だろう。停泊する氷川丸もその側のマリンタワーも、多くの歌の詞に登場するのはもちろん、それ以上にジャケット写真の撮影地として頻繁に使われている。東京では格段に多い新宿の高層ビル群が写ったジャケに迫るくらい、山下公園が写り込んだレコードの数は夥しい。見比べていくと、柵の形も時代によってマイナーチェンジしているのが判る。

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マリンタワー内のCKBショップでお土産のグッズを購入

この日は時間の関係で中華街から関内方面へと向かったため、元町周辺の散歩は後日ひとりで出かけてきた。JR石川町で下車して元町を歩く。今や死語となってしまったハマトラ発祥の地。1970年代後半、雑誌「JJ」が仕掛けたという横浜発のファッション・スタイルのことで、その流行は短かったと思う。ハマトラの三種の神器と呼ばれたのが、フクゾーの洋服、ミハマの靴、キタムラのバッグで、もちろん今なお健在の老舗ブランドとなっている。
なんていうことは男の私には一切無縁で、自分にとって元町で最も重要な店は、洋菓子の喜久家である。大正13年創業の老舗。ここのラムボールというケーキが大好物なのである。今はたいていの人気スイーツは複数のデパ地下で入手できるが、ラムボールは横浜駅の相鉄ジョイナス地下にある売店と、元町商店街の本店でしか買えないというお値打ち感も手伝って、マイ・ベスト・スイーツの座を長年譲らない。この日も土産に4個入りの函を買って帰った。すべて自分用なのだ。今回は及ばなかったが、元町からさらに足をのばせば山手・根岸地区。歌謡曲にも度々登場する外人墓地や、ユーミンの「海を見ていた午後」でソーダ水と共に印象深いレストラン“ドルフィン”がある。橋幸夫にはその名もズバリ「外人墓地」という歌があって、昭和39年のシングル「ゼッケンNo.1スタートだ」のB面に収められていた。ホットロッドと鎮魂歌、余りのギャップにとまどってしまうレコードである。

yrs+ブルー・ライト・ヨコハマ

ブルー・ライト・ヨコハマ/いしだあゆみ(昭和43年)
ビクターからコロムビアへ移籍しての3枚目、通算26枚目にあたるシングルだった。43年暮れに発売され、翌44年の年間3位の大ヒットに。永遠に横浜の歌ナンバーワンだろう。

yrs+ビューティフル・ヨコハマ

ビューティフル・ヨコハマ/平山三紀(昭和45年)
橋本淳×筒美京平コンビがふたたび挑んだ横浜ソングは、彼らの秘蔵っ子であったスクール・メイツ出身の平山三紀のデビュー曲。ジャケット写真の撮影は山下公園で行なわれた。

yrs+ハッピー・ヨコハマ

ハッピー・ヨコハマ/アン・ルイス(昭和47年)
まだアイドル然としたサード・シングル。これも撮影場所は山下公園だ。なかにし礼の作品ではおそらく最もハッピーな詞が躍る。カップリング曲の詞にも“赤いくつ”が出てくる。

yrs+グッドナイト・ヨコハマ

グッドナイト・ヨコハマ/村田洋子(昭和45年)
「グッドナイト・ベイビー」+「ブルー・ライト・ヨコハマ」。実際に「グッドナイト~」と作詞・作曲陣は一緒。恋をなくした女の歌である。ゴーゴークラブの詞が時代を物語る。

yrs+ワンチャンス・よこはま

ワンチャンス・よこはま/黒沢明とロス・プリモス(昭和46年)
「ラブユー東京」や「たそがれの銀座」など東京の歌で大ヒットを飛ばしたロス・プリモスが、横浜の歌でワンチャンス。今は亡きリード・ボーカル・森聖二の艶のある声が響き渡る。

yrs+サヨナラ横浜

サヨナラ横浜/石原裕次郎(昭和46年)
なかにし礼を人気作詞家へと導いたのは石原裕次郎だった。この後も「みんな誰かを愛してる」「わが人生に悔いなし」とヒットが連なる。作曲のユズリハ・シローは中川博之の別名。

yrs+雨のヨコハマ

雨のヨコハマ/三谷 謙(昭和44年)
昭和40年に松山まさる名義でデビューした後、一条英一時代を経ての再々デビュー曲。外人墓地や伊勢佐木町が詞に登場する。翌々年に五木ひろしとなり遂にヒット歌手へと至る。

yrs+よこはま・たそがれ

よこはま・たそがれ/五木ひろし(昭和46年)
『全日本歌謡選手権』で10週勝ち抜いての心機一転、再び横浜の曲でリベンジに挑んだところ大ヒットに。一→三→五のゲン担ぎが吉と出た。詞の元ネタはアディ・エンドレだろう。

yrs+外人墓地

外人墓地/橋 幸夫(昭和39年)
なぜこのカップリングとなったのだろうか。モーター音満載のホッドロッド・ナンバーでさんざん煽られた後だけに、B面の哀しさがより一層募る。どちらも佐伯孝夫

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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