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東京レコード散歩 番外編 横浜(後篇)

東京レコード散歩 番外編 横浜(後篇)

文/鈴木 啓之 (アーカイヴァー) 

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ドラマや映画のロケ地の定番であり、デートコースでもある山下公園

山下公園の象徴的な風景といえば、現存する唯一の戦前の客船である氷川丸。その目前に聳え立つのが横浜港のシンボル、マリンタワーである。1961(昭和36)年に開港100周年記念事業の一環として設立されたタワーはかつて灯台の役目を果たしていたが、その機能は2008年に廃止され、その翌年にリニューアルされて生まれ変わった。自分が初めて訪れたのは小学生の時だったと思う。たしか塔内のレストランで中華料理を食べた記憶があるが、なんとなく暗いイメージだった。その頃とはずいぶん様子が変わり、すっかり明るく小ぎれいになったタワーの中に入る。2階にある「横濱001ショップ」では、横浜ブランドのグッズやマリンタワーのオリジナル商品が並んでおり、その一角に横浜が誇るスーパースター、クレイジーケンバンドの横山剣の大きなオブジェがあったので思わず記念撮影。もともとは向かいのバーニーズニューヨーク横浜店のウィンドウに飾られていたものらしい。ここ数年はマリンタワー×CKBのコラボグッズが展開されているそうで、エレベーターに乗ると横山の曲「マリンタワー・ゴーゴー」のメロディが流れる。イィーネッ! 残念だったのは、土産品の中にタワーの程よいミニチュアが見当たらなかったこと。クリスタルとかではなく、そこそこリアルな造りで、棚やテーブルに飾れる適当な大きさのものが無かった。これはスカイツリーにもいえることで、その点、東京タワーはさすがの品揃えなのだ。マリンタワーにも以前はあったのかもしれないが、今後どうかひとつ。

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肉まんに舌鼓を打ちながら中華街散歩

テクテク歩いて、東側の朝陽門から中華街に入る。20年位前、門の入口付近にあった駐車場で、ショーケンといしだあゆみが仲睦まじく歩いているのを目撃したことがあった。横浜でいしだあゆみを見られるとはなんて縁起が良いのだろうと思ったものである。平日の昼間にも拘わらず、中華街は今日も賑わっていた。たまに訪れる裏路地の店で絶品の焼ソバを食した後、腹ごなしの意も込めてまた歩き出す。その料理店からすぐ近くに、昔は小さなレコード店があり、漢字の並んだカセットテープが所狭しと棚を埋めつくしていた。あれはレコード屋というよりテープ屋さんであっただろうか。中華街大通りを縦断した後に北の玄武門を抜けると横浜公園にたどり着く。そして見えてくるのが横浜スタジアム。個人的には野球の試合よりもライヴで訪れることの方が頻繁で、中でもサザンオールスターズが印象深い。サザンの野外ライヴはなぜか雨に見舞われてしまうことが多く、いつかここで観た時もそうだった。この日は野球ではなく、何かの見本市が行なわれていた様子。スタジアムまで来ればJR関内駅はもうすぐで、駅近くにある「天吉」はサザンの原由子の実家として有名な老舗の天ぷら屋さんである。なんと明治5年創業の由。今は原坊のお兄さんが経営されており、ファンの間では良く知られた聖地となっている。以前訪れた際にいただいたかき揚げ丼は絶品であったが、それもその筈でこちらの看板メニューとのこと。ぜひまた訪れたい。

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横浜球場といえばドラマ「大追跡」のエンディング

関内大通りを越えて、古くからの名店も多い馬車道方面へ。とんかつの「勝烈庵」や、系列のカフェ「馬車道十番館」が有名だが、レコード好きにとっては、かつてあった中古店「ディスクプラザ」が懐かしい。伊勢佐木町店と共によく足を運んだものだった。横浜も東京と同様に閉店してしまったレコード店は数知れず。2007年に惜しまれつつ幕を閉じたタワーレコード元町店は1981(昭和56)年の開店以来、外資系ストアの先駆けとして街のシンボル的な存在であったし、やはり元町にあった名古屋が本拠地のバナナレコードも、西口のダイヤモンド地下街店と共に2014年に閉店してしまった。西口のビブレ内、現在はタワーレコードとなっている場所はかつてのHMV。90年代には伊勢佐木町にあったマルイにヴァージン・メガストアが入っていたが、マルイの閉店とともに消滅して久しい。伊勢佐木町のヤマギワレコードショップは、秋葉原店へ。しかし現在の関内には、ディスクユニオン関内店が健在で、他のユニオンと同じように商品がよく回転しているし、歌謡曲好きの自分にとっても訪れる度に何かしら買い物をさせてくれる、相性のいい店のひとつである。横浜という土地柄からだろうか、セールの際にも良盤・珍盤が出る。店舗が入るビル上階の特設会場でたまに開催される100円市も掘り出し物が多く、信じられないくらい大量のレコードを買い込んだこともあった。今回も当然の如く立ち寄り、性懲りもなく買い物をして同行のT氏に呆れられる。今も昔も関内訪問の主たる目的がレコード漁りであることに変わりはない。

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今年7月から改修のため休館する神奈川県民ホール

歴史と文化の街・横浜散歩もいよいよ終点が近づいてきた。すっかり陽も傾きつつある中、伊勢佐木町のメイン通り、イセザキモールへ。その昔は映画館や芝居小屋、飲食店が軒を連ね、東京の銀座、大阪の千日前に匹敵する横浜の中心地であったという。横浜駅周辺の再開発が進んで以降はその座を譲ったとおぼしいが、現在でも賑わっているのはたしかだ。ただし、商店街を先へ進むほど徐々に人通りが少なくなり、少々淋しい感じが漂ってくるのも事実ではある。ヨコチクやハマ楽器など、古くからあったレコード店も既に無い。それでも老舗書店の有隣堂や、不二家レストランの1号店が今もしっかり健在なのは嬉しい。銀座の不二家はだいぶ前にリニューアルされてしまったけれど、伊勢佐木町店は昭和の面影を遺したままで、いつまでもこのままであって欲しいと思ってしまう。無くなってしまった店で今でも惜しまれるのは、伊勢佐木長者町のオデヲンビルの中にあった「先生堂書店」だろう。古書漫画や映画資料、絶版文庫、中古レコードに至るまで、すべてが充実した古書店。生涯ベスト3に入る古本屋さんと言っても過言ではない素晴らしい店だった。そのすぐ先にあった横浜最古のレコード店「ヨコチク」は明治45年に創業された当初は「伊奈蓄音機店」であったそうだが、戦後経営を継いだ2代目の伊奈正明氏が、横浜蓄音機店を略した形の「ヨコチク」に改称した。幼少時の美空ひばりが父親と共によく訪れていたのは有名な話。店頭キャンペーンが名物で、心機一転の再々デビューをした五木ひろしも店先で「よこはま・たそがれ」を歌ったという。お膝下のご当地ソング、青江三奈「伊勢佐木町ブルース」の大ヒットも、ビクターの熱心な営業マンとヨコチクでの集中キャンペーンの賜物であった。

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イセザキモールにある「伊勢佐木町ブルース」歌碑とボード

「伊勢佐木町ブルース」は個人的にも愛してやまない歌であり、平成になって間もない頃、マメカラ(ハンドマイク式の簡易カラオケマシン)を装備し、数人でこの歌を歌いながら通りを闊歩したことがある。正に若気の至りだったが、今でもここに来ると、自然と歌を口ずさんでしまう。その歌碑が、イセザキモールでも人の数がだいぶ少なくなる4丁目の通り沿いに設置されたのは、青江が急逝した1年後の2001年のこと。グランドピアノの形をした石に、歌の楽譜を刻んだパネルが埋め込まれ、手元のボタンを押すと歌の一節が流れる仕組み。すぐ後ろにはレコードジャケットを模して青江の顔が描かれた大きなイラストボードもある。一時期ボードが色褪せたり、音が出る装置も故障したりしていたが、最近になって修理が施されたようで、綺麗に復元されていた。青江三奈の艶っぽい歌声を聴きながら、ここを今回の散歩の到達点とする。レコファンとユニオンとタワレコ、そしてブックオフもある横浜駅西口付近も廻りたかったが、時間の都合で断念して番外編の横浜散歩をひとまず終えた。東京でもまだ歩いていない地域も多いレコード散歩はこれからも続けてゆきたいと思う。今度はどこの街を巡ろうか。

yrs+マリンタワーで逢いましょう

マリンタワーで逢いましょう/田代京子(昭和35年)
横浜港開港100周年の34年に着工され、36年に竣工したマリンタワーの歌が逸早く作られた。B面「哀愁のヨコハマ・ボレロ」では南京街やメリケン波止場が詞に織り込まれている。

yrs+ポート・ヨコハマ

ポート・ヨコハマ/アンディ・鈴木(昭和43年)
ポス宮崎とコニー・アイランダースに在籍していたアンディ鈴木がザ・フェニックスを率いて歌う。伊勢佐木町100年祭の折に曲が再構築され、浜いづみの歌でシングル発売された。

yrs+中華街音頭 (1)

中華街音頭/渡辺美津江(昭和48年)
横浜市観光協会・後援による中華街のPRソング。自主盤だが定価500円と明記されており、土産店などで売られていたらしい。写真は最も賑やかな中華街の中心地・善隣門の旧形態。

yrs+伊勢佐木町ブルース+デニー

伊勢佐木町ブルース/デニー白川(昭和42年)
よく知られるヒット曲とは同名異曲だが、実はこちらが先。日本のナット・キング・コールことデニー白川が、横浜のナイトクラブ「ナイト&デイ」専属歌手だった時代のナンバー。

yrs+伊勢佐木町ブルース+青江

伊勢佐木町ブルース/青江三奈(昭和43年)
作曲はラテン歌謡に定評のある鈴木庸一、作詞は川内康範。「ブルー・ライト・ヨコハマ」と並ぶ最も有名な横浜ソングはイントロのため息が悩ましい。2001年に歌碑が建立された。

yrs+モール・イセザキ

モール・イセザキ/八代亜紀(昭和54年)
青江と同じくクラブ歌手出身の八代亜紀による伊勢佐木町讃歌。老舗の書店・有隣堂から発売された。その昔は松坂屋や、横浜最古のレコード店・ヨコチクもあった商店街が歌われる。

yrs+ヨコハマ物語

ヨコハマ物語/中川浩夫とアンジェラス(昭和48年)
テンブテーションばりのフレーズが導入された躍動感溢れるコーラスは、かつて名盤解放歌集にも収められた。これはビクターから正規発売される前の自主盤。関内のクラブにて。

yrs+恋人も濡れる街角

恋人も濡れる街角/中村雅俊(昭和57年)
映画『蒲田行進曲』主題歌だったが、蒲田の歌に非ず。湘南と同じくらい横浜をテーマにした作品も多いサザンオールスターズの桑田佳祐による傑作。舞台は関内・馬車道あたり。

yrs+横浜レディ・ブルース

横浜 Lady Blues/原 由子(昭和58年)
横浜育ちの原坊はフェリス女学院在学中にフォーク・デュオ“ジェロニモ”を結成していたという。これは2ndアルバム『Miss YOKOHAMADULT』の先行シングル。桑田佳祐作詞・作曲。

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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