トップページ コラム/レビュー 8cmの嗜み 第3回 これがパノラマだ

第3回 これがパノラマだ

第3回 これがパノラマだ

鈴木啓之(アーカイヴァー) 

前回は8センチシングルの縦長の形状が活かされた全身サイズのジャケットデザインを紹介したが、今回は見方を変えて、縦長ではなく横長のジャケットとしてのデザインの話。時代は1952年の映画界に遡る。アメリカでワイドスクリーン上映方式“シネラマ”が開発された。スクリーンの縦横の比率は1対2.88。3台のカメラで同時に撮影したフィルムを3台の映写機で湾曲した横長のスクリーンに映写するというもので、製作費がかさむことや映写の際の面倒さから改良が施され、特殊なレンズで左右を圧縮してフィルムに記録し、上映時に左右を復元して横長の画像を見せる形となった。縦横の比率は1対2.35。シネマスコープ、略して“シネスコ”は20世紀フォックス社の登録商標となったため、日本では57年から映画会社が独自のネーミングで展開させる。『鳳城の花嫁』で先陣を切った“東映スコープ”を皮切りに、“日活スコープ”、“東宝スコープ”、“松竹グランドスコープ”と各社が追随してワイドスクリーン全盛となるのは、テレビジョンの登場を脅威と感じていた映画業界の対抗手段のひとつだったろう。

短冊CDを横にした際のパノラマ感は正にシネスコのスクリーンを連想させる。アナログレコードの正方形、つまり1対1から1対2となったジャケットサイズが活かされたデザイン、縦に見た場合は歌手の全身サイズに最適であるが、横に見た場合、グループの横並びショットが抜群に映えることは当然の発想であったと思われる。そこで、ここではグループアイドルを人数別に追ってみたい。またもや女性に限ったのは完全に筆者の趣味であるが、どうせ女子はこんなややこしい連載は読んでないでしょ。だったら少しでも同志たちの目の保養になればという思いもあるんですのよ。

ribbon「Virgin Snow」 ポニーキャニオン PCDA-00124 1990.11.14

Winkなどの2人組はまだ縦長の範疇として、まずは3人組から見てみよう。デジタル時代の訪れとほぼ同時に乙女塾からデビューしたribbon。デビュー曲「リトル☆デイト」からCDのみのリリースであったが、プロモーション盤のみアナログレコードが作られていたというのはいかにも過渡期のアイドルらしい。「Virgin Snow」は90年11月にリリースされた4枚目のシングルで、バストサイズの3人が並んだシンプルな構図ながら、タイトル文字の配置も収まりよく素晴らしい仕上がり。70年代のキャンディーズは3人が三角型に配置されることが多かったが、90年代のribbonは横並びなのだ。

SPEED「BODY & SOUL」 トイズファクトリー TFDC-28047 1996.8.5

次は4人組のSPEED。96年8月リリースの「BODY & SOUL」は彼女たちのデビュー曲だった。4分割で動きのあるジャケットはダンスアイドルグループならではの発想だろう。同じ沖縄出身のMAXに何故か縦型デザインが多かったのは、脚線美を見せたかったためだろうか。さらに忘れてならない4人組に、グラビアで僕らを癒してくれたC.C.ガールズがいる。当初はD.D.GAPS名義でCDを出していた彼女たちだが、「涙なしじゃ言えない」はC.C.ガールズ名義での2枚目のシングルだった。93年3月リリース。太陽石油のキャンペーンソングとのクレジットがある。夏じゃないのに水着で横たわっている構図は流石だ。水着の4人組ではもう一枚、ホリプロのグラビアチームによるユニット“NITRO”も採り上げなければ。アニメ映画『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』のために結成された1か月間の期間限定音楽ユニットであったためにこの「NITRO」が唯一の音盤なのだが、優香が歌っているのが貴重。他のメンバーは吉井怜、堀越のり、唐沢美帆であった。新宿東映パラスで行われたライヴを見た方はエライと思う。

C.C.ガールズ「涙なしじゃ言えない」 ワーナー WPDL-4337 1993.3.10

NITRO「CALLING」 ビクター VIDL-30426 1999.4.21

だんだん増えてきて次は5人。ここはやはりCoCoでしょうね。などとシャレてる場合ではない。Ribbonと同じ乙女塾出身で、3ヶ月早く「EQUALロマンス」でデビューした彼女たちだが、ribbonに比べるとジャケットデザインにアナログ感が強いのはなぜ? 単に人数が多いからだろうか。同じポニーキャニオンだがデザイナーは違っていたかもしれない。でもそんなところもまたCoCoの魅力だったりする。横並びのジャケが多い中、ここでは色づかいが個人的に好きな「ささやかな誘惑」を挙げておく。90年9月の4枚目のシングルだった。ちなみに9枚目の「だから涙と呼ばないで」を最後にメンバーの瀬能あづさが脱退して92年5月からは4人組となる。

CoCo「ささやかな誘惑」 ポニーキャニオン PCDA-00108 1990.9.5

セクシーグループのギリギリガールズも前期は5人組だった。C.C.ガールズを紹介しておいて彼女たちを紹介しないわけにはいかない。93年のデビュー曲「キスミー・トーキョー」は『平成女学園』テーマソング、『ギルガメッシュないと』挿入歌とのことだがら筋金入り。“平成女学園”の名は現在違った形で街に残り、新宿や渋谷でネオン看板を見ることが出来ます(笑)。ついでに5人組をもうひとつ。千葉麗子を中心としたオーロラ5人娘は、かつてアニメ『巨人の星』に登場してゴールデンカップスの「クールな恋」をカヴァーしていたキャラクターの再現ということで当時すかさずCDを買ったわけだが、ゲームに疎い自分はユニット結成の経緯をよく知らなかった。調べてみたら、ファミコンソフト『おたくの星座』でボスキャラとして登場したグループと同名のタイアップユニットで、SANKYOの『フィーバーガールズI』とのタイアップとして結成された女性アイドルユニットとのこと。江口寿史と本宮ひろ志の名がクレジットされているのはそのためだったか。とにかくオタク度の高い一枚である。

Giri Giri☆GIRLS「キスミー・トーキョー」 ポリドール PODH-1135 1993.2.25

オーロラ5人娘「クールな恋」 東芝EMI TODT-3009 1993.4.7

6人組はちょっと見当らなかったが、7人組はいた。まずは篠原涼子や穴井夕子を輩出した東京パフォーマンスドール。彼女たちにもパノラマジャケがある。ソロシングルが先行した中、グループでの3枚目「放課後はいつもパーティー」は92年6月にリリースされたグリコプリッツのCMソング。タイアップが多いのも短冊時代の特徴である。おニャン子や乙女塾のフジデレビ培養アイドルとモーニング娘。の間を繋いだ彼女たちがダンスパフォーマンスなどで後のアイドルグループに及ぼした役割はもっと評価されてもいいのではないか。

東京パフォーマンスドール「放課後はいつもパーティー」 EPICソニー ESDB-3305 1992.6.21

そしてモーニング娘。は98年にメジャーデビュー。今回ここで採り上げるべきジャケットは、曲は地味ながら「ふるさと」になるだろう。スタート時の5人に2期メンバーの3人が合流し、福田明日香が抜けて7人体制だった99年、6枚目のシングル。後藤真希が参加する次の「ラブマシーン」から、盤は8センチながらマキシシングル用ケースでのリリースとなるのだが、その辺の話はまた改めて。最後に紹介する桜っ子クラブに至っては、14人ともう収拾がつかない状況になっており、ここまでくると画角に収めるのが精いっぱいでデザインの工夫まで手が回らない様子が窺える。つまりは現在のAKB48をはじめとする大量人員グループの写真は短冊のジャケットではとても処理し切れないはずだから、今はマキシでよかったとつくづく思う。それでも人数を分けて複数盤を作ってますけどね。

モーニング娘。「ふるさと」 ゼティマ EPDE-1044 1999.7.14

桜っ子クラブさくら組「もう一度笑ってよ」 ビクター VIDL-10556 1994.8.24

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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