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べテラン・今陽子が“今”だから歌った昔うた『今昔歌』 時を超えて生まれ変わった名曲たち。 魅惑のカバー・アルバムの秘密に迫る

歌謡曲リミテッド スペシャルインタビュー

べテラン・今陽子が“今”だから歌った昔うた『今昔歌』
時を超えて生まれ変わった名曲たち。
魅惑のカバー・アルバムの秘密に迫る

取材/竹部吉晃 取材・文/鈴木啓之 公開日:2013.05.17

2011年11月、実に28年ぶりとなるアルバム『Love Seasons ~恋の季節たち~』をリリースしたピンキーこと今陽子。以来、約1年半ぶりとなる新作は、60~80年代の男性アーティストのヒット曲や名曲を彼女流に歌い上げた意欲作『今昔歌~ピンキーの男唄~』。デビュー45年を超える大べテランにしてますます歌唱力に磨きがかかる正真正銘の実力派シンガーに、ニューアルバム完成に至る経緯を伺った。

--今回のアルバムが誕生したきっかけを教えてください。

今:とても不幸なことだったんですけれど、昨年、尾崎紀世彦さん、そして桑名正博さん、もう少し前になるとジャガーズの岡本信さんですとか、私の飲み友達であり、歌仲間の人たちがたて続けに逝ってしまって。皆さん素晴らしいアーティストでしたから、なにか私で出来ることはないかと思ったのがきっかけでした。やっぱりミュージシャンだから、その人たちの素晴らしい作品を私なりのカバーで遺していけたら、ライブでも歌っていけたらいいなと思っていたんですよね。それがたまたま周りの人たちに賛同してもらえた。今は昭和の時代や歌が何かとクローズアップされてる時だからということもあります。もちろんご健在のかたの歌もありますけれども、亡くなった友たちへの追悼の意味をこめて、アルバムが実現に至ったということは非常に嬉しいんですよ。

--曲順が桑名さんに始まり、ジャガーズで終わっているのも意図的なことですか。

今:それは私は全然意識しなかったんですけど、スタッフとも一緒に考えた結果、偶然そうなりましたね。「恋の季節」も前のアルバム(『Love Seasons ~恋の季節たち~』)はジャズでしたが、今度は昨年ライブでもご一緒した熱帯JAZZ楽団の森村献さんにアレンジをお願いして。今回の企画とはちょっと趣旨が異なるので、ボーナス・トラックという形にさせてもらいましたが、キューバン・ラテンの素敵な「恋の季節」を入れることが出来たので、私はシンガーとして、今ものすごく幸せです。

--「恋の季節」はこれまで本当にたくさん歌われてきたと思いますが、このように新たなバージョンでというのはいかがですか。

今:私は主に舞台やライブで生きてきたので、レコーディングはどちらかというと苦手な方だったんです。お客様が目の前にいてすぐ反応がわかるのが好きだったし、それを得意として実演をやってきたので。「恋の季節」も40年以上たつとさすがにアレンジにしても古いじゃないですか。名曲っていうのは、いろんなかたがカバーしてくださったり、セルフカバーもありますけど、当時のカラオケで歌えって言われてるのは、私の主義に反するんですね。「恋の季節」はもちろん偉大な曲なんですけれど、時代と共に、自分の成長 と共に、それなりに変えて歌っていきたいっていうのが私の主張なんですよ。ですから、業界の言葉でいうところのいわゆる"営業"で歌わせていただく時は、オリジナルのアレンジで歌うこともありますが、自分のライブとか本来の場で歌う時はジャズ・バージョンとかディスコ・バージョンといった形で歌ってきましたね。

--ラテン・バージョンの「恋の季節」はとても新鮮ですね。

今:それまでサルサとかラテンというものに本格的に取り組んでいなかった分、昨年の森村さんとのライブはとても刺激になりました。もともと私は15~6歳の頃にいずみたく先生の内弟子だった時に、後にラテンの巨匠となる松岡直也さんからレッスンを受けていましたし、その頃のピンキーとキラーズのリサイタルでは殆ど松岡さんにピアノを弾いていただいてたんですよ。もちろん、もうお一人、今は亡き世良譲さんもいらっしゃいましたが。考えてみると10代の頃からすごく贅沢なミュージシャンの方々とお仕事させていただいてたことになります。昨年も森村さんにゲストとして呼んでいただいて、その時にキューバの歌も一から覚えました。スペイン語はむずかしいんです。で、その時にアレンジしていただいた「恋の季節」がめちゃくちゃカッコいいんで、ライブだけじゃもったいないなぁと思っていたところで、今回のアルバムに入れられることになって。意外にラテンが合うと思いません? 私の声も明るくなってピッチが上がるんですよね。面白いなと思いました。これは皆さんにサルサクラブで大いに踊って欲しい「恋の季節」ですね!

--カバー曲のそれぞれのアレンジにも今さんの意向が反映されているんでしょうか。

今:そうですね、ある程度は。私はそれぞれのアレンジを全部知ってる世代ですからね。今のマネージャーは20代なんですが、原曲を知らないじゃないですか。私のカバーで初めて聴くっていうので、逆にそれも新鮮な意見として採り入れたところもあります。実は今回、六本木に昭和歌謡スナックというのがあるんですが、スタッフ皆でそこへ行きまして。最初は4~50曲候補を挙げて、そこから絞り込んでいったんです。私だけじゃなくて、ホリプロとワーナーさんと、私の今のスタッフ皆さんと一緒にチョイスして作ったアルバムなんですよ。レコーディングからトラックダウンまで、ああでもない、こうでもないって言い合い、相談しながら作りました。だから愛情が込められているんです。

--選曲も60年代から80年代までと、時代の幅広さを感じます。

今:幅が出来たのは、45年間歌ってるのと、61歳という年齢が故に(笑)。若い人だとやろうと思っても、むずかしいでしょうから。その点だけは年をとっていることが得ですよね、いろんな幅が出来て。GSから浜省まで。中で一番新しいのが浜田省吾さんの「もうひとつの土曜日」でしょう。「悲しい色やね」なんかも比較的新しい方ですか。それでも30年も経つんですけれど。当初はだいたい70年代でまとめようと思っていたんですが、結果として60年代後半から80年代までいっちゃいましたね。

--尾崎さんや桑名さんへの追悼の意も濃いと思いますが、それ以外で今さんがこれは絶対に歌いたかったという曲はどれですか。

今:私はね、因幡晃さんの一連の歌が好きで。因幡さんはどちらかというとドラマティックに歌い上げる、シャンソンに近い部分があるじゃないですか。私は元来ポップス、ジャズ系なので、私なりの解釈で因幡さんのいい楽曲をまた違うイメージで歌いたいなというところがありました。因幡メロディの中でもとびきりの名曲の「わかって下さい」をジャジーなアレンジで歌いたいと思っていたら、ベーストーンの感じがすごく良い、ちょっと「カム・トゥゲザー」みたいな感じのカッコいいアレンジにしてもらえましたね。だからここでは今陽子なりの「わかって下さい」を聴いていただけると思うんですね。あともう一曲、上田正樹さんの「悲しい色やね」も前から好きな曲でした。マイルス・デイビス風のミュートトランペットが入って、私の大好きなニューヨークっぽいイメージになったので、これもすごく気に入ってますね。

--たしかにどちらも見事に生まれ変わった感を強く感じました。今さんが歌う「わかって下さい」だからこそ伝わってくるものがあります。

今:そう言っていただけるのが一番嬉しいですね。最近ではありがたいことに皆さんベテランと呼んでくださいますし、せっかく長いこと歌ってこられたので、どうせカバーするんだったらこの機会にいろんな引出しを開けて聴いてもらいたかったんですよ。私の意地として、若いコがやたらにヒット曲をカバーしますっていうのとは一緒にしたくなかったので。新しく生まれ変わったものを歌いたいという意地がいい形になったんじゃないかと。「バンバンバン」にしてもすごくアドリブが効いたジャズになっているでしょう。イントロも大胆に変えたり、オリジナルのアレンジにどんどん逆らって、私なりのジャズやラテンやロックにしていこうっていう想いでね。それが私ひとりだけじゃなく、ミュージシャンとスタッフの皆さんのおかげで、皆の力が結集して出来たという感じですね。一曲一曲、とにかくずっとディスカッションしながら録っていきましたから。

今昔歌~ピンキーの男唄~

ナイスガイな男唄カヴァー・アルバム
『今昔歌~ピンキーの男唄~』
2013年4月24日発売

ワーナーミュージックジャパン
WPCL-11237 / ¥3,000(税込)

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【収録曲】
1.「セクシャルバイオレット No.1」
(桑名正博/1979年)
2.「悲しい色やね」(上田正樹/1982年)
3.「わかって下さい」(因幡晃/1976年)
4.「さよならをもう一度」(尾崎紀世彦/1971年)
5.「夢の途中」(来生たかお/1981年)
6.「バン・バン・バン」
(ザ・スパイダース/1967年)
7.「ダンシング・オールナイト」
(もんた&ブラザーズ/1980年)
8.「もうひとつの土曜日」(浜田省吾/1985年)
9.「飾りじゃないのよ涙は」(井上陽水/1984年)
10.「そっとおやすみ」(布施明/1970年)
11.「君に会いたい」(ザ・ジャガーズ/1967年)
<ボーナス・トラック>
12.「恋の季節~ラテン・ヴァージョン~」
(ピンキーとキラーズ/1968年)

--「今昔歌」というタイトルは洒落ていますね。ジャケットも趣向が凝らされています。

今:カーペンターズで『Now and Then』というアルバムがありましたけど、それと同じく"今と昔"っていうことでね。ある程度の年齢とキャリアが無いと出来ないことだし、ちょうど私が"今"だからいいんじゃないかっていう。これもレコーディングの時に皆でいろいろとアイデアを出し合って決めたんですよ。で、もう少し内容を解りやすくしようってことで「ピンキーの男唄」をサブタイトルにしました。ジャケットはハチ公前で今と昔の私が。昔の方はデビュー直前の私なんですけど、まさかそちらが表になるとは思いませんでした(笑)。でもこれがレトロでいいのかもしれませんね。

--男性アーティストの歌をということは最初から決めてらしたんですか。

今:私は普段からカバーだとビリー・ジョエルとか、スティービー・ワンダーとか、男性歌手の歌が多いんですよね。英語だと日本語と違って男言葉・女言葉がないこともありますけど。私にはなぜ演歌が合わないかっていうと、男に捨てられてみじめったらしく追っかけてみたいなのが性格的に合わないんですよね。それよりも「ラブ・イズ・オーヴァー」のような、若い男にこれからは見守るってるから頑張って生きてゆくんだよっていう世界の方が性に合ってる。色っぽい女唄よりも、サバっとしたマニッシュな男唄の方が、私の性格と、この太くて低い声に合うんですよ。レパートリーは断然男唄が多かったんですね。解りやすくいうと色っぽい歌は合わないんです(笑)。この数年の私は着るものもだんだんカジュアルになってるので、歌も着飾るものではない方がいいなと。だから今の私の生き方とかコンセプトと、この男唄がちょうどいい感じに出会ったんじゃないですか。

--趣旨は別としても、前のアルバムからの延長といった感を受けます。

今:前作は私がライブで歌っているジャズのレパートリーが主でしたから、普段の歌をそのままレコーディングした感じだったんです。ジャズはカラオケ録って歌う感じではないじゃないですか。今回もどちらかというとそんな録り方でしたね。「そっとおやすみ」とかは、仮歌がそのままOKになった曲なんです。ブースに入ってマイクに向かって「さぁ、レコーディングだぞ!」って意気込んでも、決していい歌が歌えるわけではないってことを、45年のベテランにして改めて感じました。歌って雰囲気で楽に歌った方が逆にハートが入るんだなとか、私ってこういう歌い方も出来るんだなっていう発見があったり。スタッフがいろんな引出しを開けてくれた部分があって、12曲いろんな歌い方が出来たことに感謝しています。一人で考え込んでやっていたら、もっと堅苦しいものになったでしょうね。

--そういう意味では今までになかった今陽子さんが聴けるといったことですね。

今:そうですね。もう既にライブをアップしているので、フェイスブックの何千人っていうフレンドからいろんな意見をいただいてるんですけど、どストライクでハマる年代の男性のファンのかたが多いんですね。そうした皆が、男の哀愁、男のロマン、男のつらさ、そういったものを代表して陽子姐さんが歌ってくれていると。私のこと"アニキ"って呼ぶんですよ。陽子アニキの歌楽しみですとか(笑)。女性のファンのかたからは宝塚の男役のように思われてるみたいですね。陽子さんの歌は男前で嬉しいですとかね。男唄だけど、私は女の気持ちも解って歌っているから、また解釈も違ってくると思うんですよね。布袋(寅泰)さんもFBフレンドなんですけど、「これ、楽しみですねー。」なんていうメッセージをくださいました。

--アルバムの音が最終形ではなく、今後のライブではまた違った形で聴かせていただけたりするんでしょうか。

今:このアルバムの歌を私がこれからライブで歌ってゆくと、ミュージシャンからも影響を受けるでしょうし、また全然違う「悲しい色やね」とか「セクシャル・バイオレット№1」になっていったりすると思うんで、それがすごく楽しみなんですよね。バリエーションでいろいろやってゆけたら。曲はもう文句なしの名曲なわけですから。手前味噌ながら、私の「恋の季節」もたくさんの皆さんに知っていただいているわけで。その名曲をいかに自分が楽しみながら、こういう表現も素敵だということを訴えてゆけたら、歌手冥利に尽きると思いますし。亡くなった桑名さんも、クロコダイルでライブをやった時に「ロック版「恋の季節」を作ってくれたんですよ。それはもう2エレキギターでキーも1音高くしてシャウトしてすごくカッコいいんですね。私も生きて歌ってゆく限り、オリジナルに拘らずにやっていきたいと思います。

--「恋の季節」は若い世代にもオリジナルに拘らずにカバーして欲しいと思われますか。

今:ハイ。本人がこうして崩しているわけですから、これからの後輩たちにももっと遊んで、自分なりの「恋の季節」を歌い継いでいって欲しい。それで親子共演とか、もっと言えば孫世代と共演とか、「恋の季節」一曲だけでライブが出来たら面白いですよね。その時点でキラーズが元気だったら彼らも呼んで。いずみたく先生は稀代のメロディメーカーでしたから、本当に美しくて覚えやすいメロディが多い。「夜明けのスキャット」もそうですが、そのシンプルさがあってこそ、ジャズにもロックにもアレンジが可能だと思うんです。ただこれは大事なことですけど、シンプルなメロディほど、歌い手にとっては難しいんですよ。間が空いちゃうんで。私がいつも「恋の季節」を飽きたとか嫌いっていっちゃうのは、実は難しいからなんです。今回はテンポの速いラテンのアレンジで歌いやすかったですが。「恋の季節」に限らず、あとの11曲も皆さんよく知ってる曲と思いますが、新しいものとして聴いていただけたら嬉しい。これからライブでもさらに歌い続けていきたいと思っています。それがとても楽しみなんです!

今 陽子

1951年愛知県生まれ。作曲家・いずみたくに師事し、67年にビクターから「甘ったれたいの」でデビュー。翌年キングレコードからピンキーとキラーズとして再デビューした「恋の季節」が300万枚以上を売り上げる特大ヒットとなる。その後もヒットを重ね、72年にはソロに転向。81年から82年にかけて単身ニューヨークへ渡り、歌やダンスを勉強した。近年では歌手だけでなく、演技者としてテレビやステージでも活躍。SNSでの活動も活発で、近著に「60歳からのフェイスブック」がある。

公式サイト(Warner Music Japan):
http://wmg.jp/artist/konyoko/
公式サイト(ホリプロ):
http://horipro.co.jp/talent/PFE005/
公式facebook:
http://www.facebook.com/kon.yoko

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