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DJフクタケ

歌謡曲リミテッド スペシャルインタビュー

DJフクタケ

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取材・文/竹部吉晃 公開日:2014.03.24

かつてない方法で歌謡曲の新しい楽しみ方を提示しているCDとして評判の『ヤバ歌謡 SUPER NONSTOP MIX ~Mixed by DJフクタケ』。確かに、懐かしい曲を収録したコンピレーションCDや映像を集めたDVD作品とは一味違った風合いをもった歌謡曲アイデムといえる。ユニバーサルミュージックの膨大なカタログから選ばれた昭和の歌謡曲をジャンルを選ばず好き勝手に縦断し横断してみせる、そのセンスと手腕が実に見事。CDのプレイボタンを押すと、あっという間に34曲を完聴してしまう。しかも、ここにはCD音源ではなく、DJフクタケの所有する貴重なアナログレコードが用いられている。その温かくもあり、すこし掠れたような音質も味わい深い。そして、ダンスミュージックをコンセプトにして作ったというように、聴いているいつのまにか体が動き始めてしまう、あの歌謡曲の魔法が詰め込まれている。

--まず、DJフクタケさんのプロフィールからうかがいたいのですが。資料によれば、90年代前半からクラブでDJ活動を始められたそうですね。

DJ フクタケ:最初の頃は洋楽をメインにかけていていました。主に海外のテクノをよく聴いていたんです。そのルーツを辿るかたちで、80年代の洋楽を掘り下げていき、それらのレコードをかけていくうちに、同時期の日本の歌謡曲にもDJとして使える曲があるっていうことにはたと気づいたんです。言葉が日本語というだけで、DJの解釈とかけ方次第でクラブミュージックとして楽しめることがわかり、そこから日本語の曲をかけるようになっていったんです。その頃から「テクノ歌謡」というジャンルの概念を自ら提唱し、99年にP-VINEからリリースされた『テクノ歌謡コレクション』というコンピレーションCDシリーズの制作に関わることになりました。

--『テクノ歌謡』のコンピレーションCDは画期的でした。その頃は、クラブで歌謡曲をかけていたDJはフクタケさんのほかにいたのですか。

DJ フクタケ:当時はまだ多くありませんでした。なので、まわりの理解を得るのがなかなか難しかったです。当時、ぼくは大阪でDJをやっていたんですが、大阪は東京に比べると音楽のジャンルの垣根についてのこだわりがさほど厳しくなかったので、「面白ければOK!」という感覚のお客さんが多かった。クラブのお店についているお客さんが、たまたまその日に遊びに来て、「今日はいい音楽かかっているね」という感じの楽しみ方がけっこうポピュラーだったんです。そういう人たちに助けられ、育てられたところはあります。

--大阪と東京、当時と今では状況が違うと。

DJ フクタケ:いま、東京でDJをやっていて思うのは、自分の好きな曲がかかるからとか、知っているDJが回すからという理由以外では集客が難しくなっています。という意味では、今のお客さんのほうがシビアといいますか。意外性やハプニング的な音楽との出会いより、自分が求めているものがちゃんと提供されるかどうかということを冷静に見ていると思いますね。

--『テクノ歌謡』がDJフクタケさんの転機になったということですね。

DJ フクタケ:P-VINEからメーカー別のコンピレーションが8枚、アーティスト別のアルバム復刻が10枚出ました。この『テクノ歌謡』は、いわゆるヒット曲を集めたコンピレーションではない、80年代発掘ものコンピの先駆けだったんじゃないでしょうか。

--確かにそうですね。元々洋楽リスナーでもあったフクタケさんの耳で聴く歌謡曲の魅力はどういうところにありましたか。

DJ フクタケ:歌謡曲を聴く場合、どうしてもメロディや歌詞に注意が向きがちになりますよね。あるいは歌っている歌手。歌詞の意味が分かるがゆえに、言葉に引きずられてしまいます。歌謡曲は基本が歌主体なんです。でも、DJの感覚で聴くと、ベースラインやビートとか、リズムの構成要素のほうが耳に残るんです。そのうえで、歌謡曲を聴いたとき、クラブでかけたい曲やミックスしたい曲がたくさんあったんです。それをDJで試してみたかったんです。

--90年代前半には、歌謡曲のレアグルーヴというカテゴリーはあったんですか。

DJ フクタケ:90年代前半には、すでに一部のコアな人たちの間で60年代から70年代にかけての歌謡曲のレアグルーヴ音源の発掘は始まっていました。“和モノ”という形で話題にはなっていましたが、ぼくのように80年代モノをかける人は少なくて、異端な存在だったと思います。

--そんな中で始まった『テクノ歌謡』はどういった受け入れられ方だったんですか。

DJ フクタケ:反応は世代によってまちまちでした。10~20歳代のリアルタイムで80年代のテクノ歌謡的なものを聴いていた人たちの一部にはサウンドはさておき「日本語の歌=恥ずかしい」という思いがあったようでした。人気のあったYMOとは別物、亜流と考えていた人も。でも、『テクノ歌謡』コンピレーションが出た当時の若者は80年代への変な先入観がないぶん、面白がってくれる人が多かった印象があります。アイドル曲や企画ものについても固定化されたイメージがなく、フラットに捉えて純粋に音として面白いという反応が返ってきて勇気づけられました。

DJ フクタケ
『ヤバ歌謡 SUPER NONSTOP MIX ~Mixed by DJフクタケ』 V.A.

TYCN-60084 2014.02.19発売
価格(税込) ¥2,100
ユニバーサルミュージック合同会社
amazonで購入する
収録曲:
1. 中原めいこ/君たち キウイ・パパイア・マンゴー だね。
2. 南翔子/殿方ごめん遊ばせ
3. 本田美奈子/Oneway Generation
4. ザ・ハプニングス・フォー/何故?
5. ソニア・ローザ/モーニング・コーヒー
6. 木村ヨシコ/人魚に恋した少年
7. サニー・トーンズ/恐怖の町(怪奇大作戦)
8. EVE(イヴ)/お前が悪い
9. りりィ/皮肉
10. サトー・ノト/ドッキング・ダンス
11. ザ・ゴールデン・カップス/本牧ブルース
12. ザ・リンド&リンダース/ハ・ハ・ハ
13. 山本謙司、岸千恵子/NEBUTA BOUND ~GET DOWN SNOW FUNK~
14. 富樫明生/Primitive Power
15. 藤波辰巳/マッチョ・ドラゴン
16. スターボー/ハートブレイク太陽族
17. C-C-B/原色したいね
18. KAN/君から目がはなせない
19. ローズマリー/可愛いいひとよ
20. ポピーズ/ソウル 恋の奴隷
21. 野坂昭如/通せば天国
22. 海援隊/JODAN JODAN
23. ザ・ゴールデン・カップス/クールな恋
24. 小林泉美&Flying Mimi Band/スプーンダンス<タイフーン'79>
25. 高見山大五郎/夢見るジェシー
26. E.S.Island/テクテクマミー
27. 酒井司優子/コンピューターおばあちゃん
28. 江戸真樹/右あがりの初恋
29. いとうせいこう/Gi Mi Gi Mi Time ~徹夜明け多忙人にささぐ
30. 黒沢ひろみ/VENUS
31. ERI/おもいがけない恋
32. 早見優/ハートは戻らない(Get out of my life)<SPECIAL RE-MIX VERSION>
33. 成田勝/TURN AROUND AND COUNT 2 TEN
34. 少女隊/君の瞳に恋してる(CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU)

--フクタケさんが歌謡曲DJになるきっかけとなった1曲はどれになりますか。

DJ フクタケ:テクノ歌謡という視点でインパクトを受けたのはスターボー「ハートブレイク太陽族」です。B面の「TOKYOベイ・ブルース」も素晴らしいんですが、どちらも細野晴臣さんの曲でベースラインが黒っぽいんです。スターボーはどうしても、デビュー時の宇宙人という設定やビジュアル、歌詞のインパクトに目が行きがちで、DJでかけても飛び道具として見られてしまうんです。でも、ぼくは曲として素晴らしくて、カッコいいからクラブでかけているわけで。でも、「ハートブレイク太陽族」をクラブでかける説得力をもたせるには、DJとしてそこに至るまでの選曲でちゃんと流れを作らなくてはいけないので、そういった部分はすごく気を遣いますね。

--スターボー「ハートブレイク太陽族」はリリース当時よりも、時間が経つごとに評価が上がっていますよね。

DJ フクタケ:『テクノ歌謡』」のコンピにも収録できて、多くの人に聞いてもらえる機会が増えていきました。

--今回の『ヤバ歌謡』にも入っていますもんね。90年代後半からはずっと歌謡曲をメインにDJをやられてきたんですか。

DJ フクタケ:比重としては日本語のもの、歌謡曲などが多かったです。洋楽と歌謡曲をボーダーレスにかけることもしていましたが、ぼくはそもそも、クラブミュージックのいずれのシーンにも属すことなくマイペースで活動していました。だから、そういうDJ界隈のルールに縛られることなく自由に活動できていた。結果的にそれも大きかったと思いますね。

--最近よく言われる歌謡曲人気を感じることはありますか。

DJ フクタケ:ノスタルジー感覚で楽しまれている部分はもちろんあると思うんですが、楽曲の良さを捉えなおしている人が増えている気はします。当時を知る人が歌謡曲を聴き直して改めてそのよさを評価する動きと、当時を全く知らない若い人たちが歌謡曲を新しい音楽として捉えているところがあるように感じます。打ち込みの音に耳が慣れている若い世代にとって、当時の歌謡曲の作りはとてもリッチで贅沢なものに聴こえているのではないでしょうか。あとは、大きなジャケットレコードに対するモノとしての憧れをもった人が増えている感じがします。DJをやっていても、若い人から「レコードでDJをやっているのはすごいですね」とか「ジャケットを見せてください」ってよく言われますから。

--若い世代の歌謡曲ファンが確実に増えていると。

DJ フクタケ:歌謡曲を求めている人が増えている感覚は確実にあります。でもまだクラブで歌謡曲を聴くと言うことについては一般的ではない。だから、このミックスCDを聴いてもらって、クラブで聴く歌謡曲の楽しさを感覚的に分かってもらえればいいな、と思いますね。

--フクタケさんはレコードだけでDJをされていて、この『ヤバ歌謡』のDJミックスもレコード音源で収録しているんですよね。こういう形態のCDは史上初ですかね。

DJ フクタケ:歌謡曲では過去にはないと思います。ぼくは基本的にシングルレコードでしかDJをやらないんです。だからこのCDも普段自分がやっているDJに近い形でやりたかったんです。当然、レコードなので盤の状態に気を遣って、何枚か持っているレコードに関してはいちばんコンディションのいいものを使いました。でも、ノイズが入っていてもそれが味に聴こえるので、マスタリング作業のときもキレイに修正しすぎずに、レコードの味わいを残すようにしました。

--確かにレコードの音です。アンオフィシャルなミックスCDではよくありますが、正規盤では初めてのリリースなんですね。

DJ フクタケ:しかも、元のオリジナル音源にビートを足すなどの加工もせず、添加物なしで、当時のレコードに封じ込められていたグルーヴだけを抽出して、大きなうねりをつくることを心がけました。

--どういった経緯でこのCDが出ることになったのでしょうか。

DJ フクタケ:レコード会社(ユニバーサルミュージック)の方から過去の音源を使ったテクノ歌謡のDJミックスCDが作れないかと、声掛けをいただいたのが始まりです。いろいろ考えているときに、使える音源のレーベル名をお聞きしたら、錚々たる名前が出てきたんです。東芝音工、EXPRESS、ポリドール、キティ……。これだけのレーベルの音源を使うことができるなら、テクノ歌謡だけに絞るのではなく、また時代も幅広くして、いろいろな音源を使った、ユニバーサルでしかできないDJミックスCDが作れるんじゃないですか、と逆に提案したんです。

--レコード会社の統廃合の賜物であったわけですね。

DJ フクタケ:使えるカタログの幅が広がるのであれば、時代もジャンルも縦断、横断したものにしようということになり、最終的にこういう形になりました。昔のように、レコード会社1社だけの音源しか使えなかったら、ここまでのものは作れなかったでしょうね。

--『ヤバ歌謡』というタイトルはどういうところから生まれたのですか。

DJ フクタケ:最初の段階では『テクノ歌謡ミックス(仮)』、その次が『アゲ歌謡』でした。テンションが上がる感じの内容だから、そういうタイトルにしたんだと思いますが、自分が選曲した中には、緩めのBPMだけどグルーヴのある曲もあるんです。自分がDJをやるときにはだいたい1時間前後の流れでメリハリのある選曲を考えますから、構成要素はアッパーな曲だけではないんです。なので、『アゲ歌謡』というタイトルでは、幅広い内容を包括できないだろうということになり、だったら、『ヤバ歌謡』のほうがいいのではないかと思いついたんです。感覚的な物言いにはなってしまいますが、テンションが上がるヤバさもあれば、ドープめといいますか、腰に来るグルーヴィーなヤバさもある。そういう意味を含ませられないかと思って、『ヤバ歌謡』としたんです。

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DJフクタケ

1990年代より、DJとして“テクノ歌謡”のジャンル概念をいち早く提唱。1999年にコンピレーションCD『テクノ歌謡コレクション』シリーズ(P-VINE)を、選曲家チーム"8-bits"の一員としてコンパイル。現在は、渋谷アシッドパンダカフェを拠点に都内クラブのJ-POP・和モノ系DJパーティや80's洋楽系イベントを中心にプレイ。また、1960~80年代のオールドスクールなアニメ・特撮楽曲をレアグルーヴ的解釈でアナログ7インチ シングルレコード(ドーナツ盤)にこだわりDJプレイする“まんがジョッキー”としても活動中。2013年からは(有)申し訳 代表取締役 ミッツィー申し訳 a.k.a DJ Michelle Sorry とのコンビによるアナログ専門B2B(Back to Back)ユニット “Do The Negative Thinking!!!”も展開中。

オフィシャルサイト:
http://www.universal-music.co.jp/dj-fukutake/

Twitter:
https://twitter.com/DJ_fukutake

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