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DJフクタケ

歌謡曲リミテッド スペシャルインタビュー

DJフクタケ

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取材・文/竹部吉晃 公開日:2014.03.24

--CDには全34曲入っていますが、選曲はどういう基準で行ったのですか。

DJ フクタケ:基本的には、「歌謡曲でDJミックスするとこういう楽しみ方が出来ます」ということですね。60年代から80年代にかけての幅広い時代のいろんなジャンルの曲の楽曲を収録しています。あと、重要視したのはグルーヴの部分ですね。クラブで聴いているような感覚を表現したかったので、ダンスミュージックとして機能させたミックスにしたかったんです。

--それは十分伝わってきます。初CD化の音源もありますよね。

DJ フクタケ:早見優さんのシングル「ハートは戻らない」は12インチが発売されましたが、バージョン違いの7インチはプロモーション盤のみで今回が初CD化になります。あと、小林泉美&Flying Mimi Band「スプーンダンス」や野坂昭如「通せば天国」(シングルバージョン)も初CD化だと思います。意外に初CD化音源があるんですよね。

--メジャー曲とマイナー曲のバランスについてはどのようにお考えですか。

DJ フクタケ:最初に選んだ収録曲候補は150曲くらいありました。ちょっと欲張ったといいますか、DJとして曲をつなぐ際に選択肢が少ないと困ってしまいますので、多めに出させてもらったんです。そこから絞り込んでいく際に、ある程度知名度のある曲、アーティストということは念頭に置きました。とはいいつつ、こういうCDの役割のひとつは知られざる名曲を紹介することにあるので、そういう意味ではバランスを考えた選曲になっています。この流れの中で、あまり知られていない曲を聴いていただき、その良さを発見していただきたいですね。

--1曲目を「君たち キウイ・パパイア・マンゴーだね。」にするのは悩まれたんではないですか。

DJ フクタケ:いくつか構成を考えていたのですが、最初に予定していたのはスターボー「ハートブレイク太陽族」で始まるパターンだったんです。ただ、CDショップの試聴機とかにもし入った場合、1曲目が「ハートブレイク太陽族」だと少しマニアックかなと思いましたし、最初はもっと派手で勢いのある曲がいいなということで、華があって、ラテン調のファンキーな「君たち キウイ・パパイア・マンゴーだね。」をもってきたんです。

--「君たち キウイ・パパイア・マンゴーだね。」は当時を知る人であれば、必ず知っている曲ですよね。

DJ フクタケ:ファンカラティーナ調でキャッチーな曲ですよね。当時を知らない世代にとっても、最初の3曲を聞くとこのCDの狙いが伝わるのかなと思ったんです。

--80年代のテクノ歌謡に精通しているフクタケさんということでしたが、4曲目「何故?」(ザ・ハプニングス・フォー)から10曲目「ドッキング・ダンス」(サトー・ノト)までの70年代攻勢がたまりません。ここは素晴らしい流れですね。

DJ フクタケ:それは嬉しいです。この辺はレアグルーヴと言われる感じの曲が多いです。つなぎの流れで聴いて楽しんでもらえると本当にDJ冥利に尽きるといいますか。曲単体でいい曲であることはもちろんなんですが、流れで提示するのがDJの役割だと思いますので。

--とくに「ドッキング・ダンス」は最高ですね。

DJ フクタケ:和モノDJの中ではカルト的な人気がある曲です。当時は全然ヒットはしていないんですけど、いま聴くとすごくインパクトがありますよね。これはオリジナル盤でかけていますけど、90年代には再発盤が出ていまして、やはりDJ需要があるんですね。

--もっと聴きたいというタイミングで次の曲に行くところが心地いいですよね。

DJ フクタケ:気になる曲が見つかった人はそこからさらに掘り下げて聴いてもらうきっかけになればいいなと思います。自分自身も歌謡曲に限らず他のDJのプレイを聴いて知った曲はたくさんありますから。このCDが音楽を聴く幅を広げるきっかけになれば嬉しいです。

--影響を受けたDJはいらっしゃるんですか。

DJ フクタケ:特定の人に影響を受けたということはなく、DJカルチャーそのものに大きな影響を受けています。たとえば、音楽には多くのジャンルがありますが、DJはそういうジャンルごとのマナーに縛られずにいろいろな音楽を混ぜあわてグルーヴを作ることができます。そこがDJの面白いところだと思うんです。とくに90年代は昔の音源の発掘が盛んに行われ、テクノ、ハウス、HIP HOP,ジャズなど様々なジャンルの混合が盛んに行われた時期だったので、その時代のDJカルチャー特有のミクスチャー感覚には大きな影響を受けました。それが結果的に、今回の『ヤバ歌謡』の発想につながっているんだと思います。

--今もレコードは買われているんですか。

DJ フクタケ:日々買っています。中古レコード店の数は少なくなってはいますが、東京はまだ頑張っているレコード屋さんがあるので、時間を見つけては覗いています。まだまだ持っていないレコードもたくさんあるので。

--だいたいのレコードはすでに持っている印象ですけど(笑)。

DJ フクタケ:ぼくが元々後に「テクノ歌謡」と呼ぶようなレコードを集め始めたときは、学生でお金はないけど時間はあるという感じでしたので、1枚100円以下のレコードばかりを中心に買っていました。プレミアは付いていないけど、サウンド的に楽しめる面白いレコードを集めることが後のテクノ歌謡DJにつながっていったんです。必ずしも、プレミア盤だけはすべてではない。みんなが見落としているモノにこそ宝はあると思いますね。他人の評価は参考程度にしておいて、本当にいいかどうかは自分の感覚を信じてほしいです。ネットなどの影響で情報が手に入りやすくなった分、他人の評価に左右される人が多くなっている気はしますので。

--確かにそうですね。今回のCDで改めて「コンピューターおばあちゃん」(酒井司優子)を聴いて、改めて時代を超えた名曲であると思いました。

DJ フクタケ:本当にそうですね。ぼくは子どもの頃、リアルタイムでこの曲がテレビから流れるのを聴いていましたが、シングル盤を手に入れたのは時間が経って大人になってからでした。そこで改めて曲を聴いて思ったのは、時代の空気が封じ込められたアレンジではあるんだけども、時代に左右されないポップさがあるってことです。何度もDJでかけている曲ですが、古臭いと思ったことが一度もないんです。

--ある意味、ベタな選曲かもしれないけど、全然手あかが付いていませんよね。

DJ フクタケ:曲としての格が保たれていて、殿堂入りしている感じがあります。

--あと、黒沢ひろみ「ヴィーナス」(バナナラマのカバー盤)も新鮮に聴こえますね。

DJ フクタケ:みなさん、長山洋子さんの歌唱で覚えていると思いますが、黒沢ひろみ盤は歌詞が違うんです。知っている曲だけどバージョンが違うというものも収録したかったんです。これはあまり中古盤でも見かけなくなりましたね。

--少女隊の「君の瞳に恋してる」もそうですよね。

DJ フクタケ:これも当時のセールス的にはそれほど売れていませんよね。でも、いま聴くと80年代のキラキラ感、煌びやかな感じがレコードに封じ込められていますよ。懐かしさと新しさが同居している曲ですね。

--80年代はアイドルが洋楽をカバーすることで、アイドル自体が輝く感じがありましたよね。

DJ フクタケ:すごくわかります。何割か増しで輝いている感じがありますよね。洋楽も元気があった時代で、ヒット曲がいろいろなところで流れていました。耳なじみがあった曲がアイドル歌手によって日本語でカバーされることで相乗効果が生まれていたんでしょうね。

--『ヤバ歌謡』には、高見山、藤波辰巳といったスポーツ選手が歌うレコードも収録されています。

DJ フクタケ:高見山はハワイ出身で初の外国人入幕力士ということで、昭和の一時期すごく人気がありましたよね。メディアへの露出も多く、その人気にあやかってレコードも出たのだと思います。この曲はディスコ全盛だった時代感が出ていて実にファンキー。愛嬌があって人気者だった高見山のノリの良さも出ています。懐かしの力士という感覚以上に、楽曲としてのグルーヴが最高なので、そのギャップの楽しさも狙って収録しました。

--藤波辰巳の曲もいい感じでCDにはまっていますね。しかも、ドラゴンの素朴な歌唱が目立たないところでうまくカットしている(笑)。

DJ フクタケ:この曲やスターボーの曲はネタ的な扱いを受けて、どうしても半笑い的に聴かれてしまうんです。でも、楽曲としてとてもよく出来ているし、音楽として魅力的。それをDJミックスで表現したかったんです。だから、そういうふうに捉えていただくと本当に嬉しいです。昔は何かしらのかたちで名を成した人は名刺代わりみたいな感じでシングルレコードを出していて、とくに人気スポーツ選手やお笑い芸人は必ずレコードを出していました。出して当たり前のような感じでしたけど、最近は減りましたよね。もっと気軽に人気者の歌が聴きたいんですけどね。

--その辺が時代のシビアさというか。

DJ フクタケ:マーケティング主導になるとビジネスとして成立しないと判断されてしまうんでしょうね。昔はレコード会社が勢いで出したようなレコードをこちらもノリで買う楽しみがありました。「なんでこんな人がこんな曲を歌っているんだろう?」という驚きがあるから昭和のレコードは楽しいんですよね。

--こうやって、『ヤバ歌謡』がオフィシャルのCDとなって世の中に流通されていることについての感想はありますか。

DJ フクタケ:自分のDJミックスのCDがオフィシャルでリリースされるなんてことはまったく考えないでDJ活動をしていたので、本当に感慨深いです。パッケージになったものを聴いてからじわじわ込み上げてくるものがありました。言われたように、これが一般のCD流通の商品として世の中に出ていくことのワクワク感があります。ノンストップのDJミックスと気付かず、コンピレーションCDだと思って間違って買ってしまう人もいるかもしれないんですが、そういう人がこのCDを聴いて衝撃を受けてくれたらそれはそれですごく面白いかなと思います。思わぬ出会いがこのCDから生まれてくれたら嬉しいです。

--『ヤバ歌謡』は歌謡曲の新しい聴き方ができるCDだと思います。

DJ フクタケ:ありがとうございます。知っている曲が違った感覚で耳に入ってくれたらいいなと思います。

--やり残したことはありますか。

DJ フクタケ:まだまだいい曲がたくさんありますから、これが売れて、話題になって、ぜひ第二弾を作り、その後もシリーズ化していきたいですね。もっといいものが作れると思いますので。

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DJフクタケ

1990年代より、DJとして“テクノ歌謡”のジャンル概念をいち早く提唱。1999年にコンピレーションCD『テクノ歌謡コレクション』シリーズ(P-VINE)を、選曲家チーム"8-bits"の一員としてコンパイル。現在は、渋谷アシッドパンダカフェを拠点に都内クラブのJ-POP・和モノ系DJパーティや80's洋楽系イベントを中心にプレイ。また、1960~80年代のオールドスクールなアニメ・特撮楽曲をレアグルーヴ的解釈でアナログ7インチ シングルレコード(ドーナツ盤)にこだわりDJプレイする“まんがジョッキー”としても活動中。2013年からは(有)申し訳 代表取締役 ミッツィー申し訳 a.k.a DJ Michelle Sorry とのコンビによるアナログ専門B2B(Back to Back)ユニット “Do The Negative Thinking!!!”も展開中。

オフィシャルサイト:
http://www.universal-music.co.jp/dj-fukutake/

Twitter:
https://twitter.com/DJ_fukutake

 

『東京レコード散歩』2017年2月22日発売。東京にちなんだ曲だけを収録したコンピレーション・アルバム『東京レコード散歩』第二弾がレコード会社3社から同時発売!

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