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特集 真心ブラザーズ 真心ブラザーズ、カヴァー・アルバム『PACK TO THE FUTURE』賞味法

歌謡曲リミテッド

特集 真心ブラザーズ
真心ブラザーズ、カヴァー・アルバム
『PACK TO THE FUTURE』賞味法

取材・文/大畑幸子 公開日:2015.10.19

音楽への大切な思いを包んだ未来への贈り物

いきなり個人的なことから書き始めることをまずはお許しいただきたい。日常生活の中でふとした時に頭の中に流れるメロディーが幾つかあるのだが、その曲たちは大抵10代の頃にワクワクしながら聴いてきた音楽が多い。そんなふうに私の脳内BGMの中でたまに流れるのが「風になりたい」(76年/川村ゆうこ)だったりするので、今回真心ブラザーズが自身初となるカヴァー・アルバム『PACK TO THE FUTURE』で同曲をカヴァーしている事実を知ると、その偶然を素直に喜びテンションが上がった。それにこれまでにもこの名曲(私はそう信じて疑わない)を取り上げてきたアーティストはいるが、私が記憶している限りにおいてセルフ・カヴァーした吉田拓郎以外はすべて女性アーティストだった(と思う)し、さらに言えば、この曲が久々に表舞台に引き上げられ再び脚光を浴びることが何よりも嬉しかったのである。

真心ブラザーズの『PACK TO THE FUTURE』は、上記の「風になりたい」のみならず、70年代から80年代の女性歌手にスポットを当て彼女たちの楽曲を取り上げている。例えば、松田聖子の「風立ちぬ」(81年)、浅田美代子の「赤い風船」(73年)などなど、真心と女性アイドル歌手という全く相容れないような2つの組み合わせが実に新鮮で、そのギャップの面白さにやられてしまった。選曲の妙に思わず口角があがり、さらにアルバムを聴いていくと、もう楽しさのオンパレード。‟楽曲&それぞれの歌手&作家陣”に対する真心2人のリスペクトを感じずにはいられなかったし、だからこそ独自の解釈によるアレンジと多様性に富んだアプローチに心躍らされたのは言うまでもない。

そもそも本作を制作するにあたり、レコードメーカーサイドからの<昭和のアイドル>という一案に上乗せして<女性アイドル縛り>を提案したのはYO-KINGだったという。そのあたりはMUSICSHELFのインタビューにも書いたが、今回の流れは真心が坂本真綾の「ポケットを空にして」をトリビュートしたことから始まり、加えてYO-KINGが70年代への憧憬を感じた「赤い風船」を歌いたいと思ったことに起因する。その方向性に決まってからスタッフを交えての選曲会では30~40曲程の候補曲があったという。桜井秀俊に言わせると、その中から「YO-KINGが歌っていて楽しいとかのびのびとできるような曲」を基本に先述した「風立ちぬ」など全11曲が選ばれたのである。

本作を制作する前にYO-KINGが掲げていたのは「なるべくスライド・ギターをメインにしたアルバムにしたい」というものだった。それに応えるべく桜井が各所で実にキャッチ―で心地よいプレイを聴かせており、従来の歌謡曲とは違う色彩感を醸し出すことに成功している。YO-KINGは、アルバム制作前に<ボブ・ディランやザ・バンドやライ・クーダーなどといったアルバムの音を気に入っていてライヴなどでそういったアプローチをしていた>のだとインタビューで発言していたのだが、70年代のロック・シーンではスライド・ギターを多用し、重要な役割を果たす楽曲も多かったことを考えると、今回彼らが選んだ楽曲、特に70年代の楽曲にはそんな時代性との符合が感じられる。そのあたりは真心らしさを魅せていくことを踏まえたYO-KING自身の音楽的直観の深さを表出しているのだと思わざるを得ない。ともかくスライド・ギターの魔法がたっぷりと注入されているのだ。

真心ブラザーズ
『PACK TO THE FUTURE』

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収録曲に目をやると、①「風立ちぬ」は松田聖子の7thシングル。オープニングでいきなり「君は天然色」のイントロをつけ、さらに楽曲全体の細部に亘って亡き大瀧詠一氏へのオマージュで彩られているのが実に奥深い。リードトラックの②「風になりたい」は、小室等、吉田拓郎、泉谷しげる、井上陽水が設立したレコード会社、フォーライフ・レコードの第1回新人オーディション・グランプリを受賞した川村ゆうこのデビュー曲で、吉田拓郎プロデュースによる楽曲。原曲の間奏のシンセ部分をスライド・ギターで奏でているあたりもいい味を出している。③「横浜いれぶん」(76年)は、木之内みどりの11thシングルで、彼女の代表曲のひとつ。作曲はザ・スパイダーズ~井上堯之バンド~大野克夫バンドを経て幅広く活躍している大野克夫。沢田研二の「勝手にしやがれ」ほかヒット曲を量産したことでも知られる。真心はこの楽曲をディスコ・アレンジに変身させ、躍動感溢れるヴァージョンに仕立てている。④「メイン・テーマ」(84年)は、薬師丸ひろ子の2ndシングルで、彼女の主演映画『メイン・テーマ』の主題歌。タンゴ調のサウンドでソリッドに迫ってくる今曲は、ポリスの某曲を彷彿させているあたりが面白い。⑤「赤い風船」は安井かずみ作詞・筒美京平作曲による浅田美代子のデビューシングル。原曲の持つ純粋性を大事に真心流のロックテイストを注ぎ込んでいて、YO-KINGのヴォーカルにもどこか清廉さを感じる。⑥「早春の港」(73年)は、南沙織の6thシングルで、当時のアイドル歌謡全盛期を飾る名曲のひとつ。この曲に触発され、後に吉田拓郎が「シンシア」(74年)をアンサーソングとして制作し、かまやつひろしとのユニットで歌ったことでも知られている。桜井のラップスチール・ギターも味わい深くじんわりと心に沁みてくる。⑤と⑥は、まさに70年代の青春像が鮮明に浮かび上がってくるようなアプローチで嬉しい。⑦「風の谷のナウシカ」(84年)は、安田成美のデビュー曲。同名映画のイメージソングとして発表されたものだが、細野晴臣作曲によるハイクオリティーなこの曲をポリス風の味付けで真心流にコーティングし、ライヴ感あるポップな曲に仕上げている。太田裕美の4thシングルとなる⑧「木綿のハンカチーフ」(75年)は、松本隆作詞、筒美京平作曲の永遠の名曲。真心ブラザーズ・ファンにはお馴染の楽曲でこれまでにも多様なヴァージョンで歌ってきたそうである。今回はセカンドラインを取り入れながら、アメリカ南部な雰囲気を出したヴァージョンで楽しませてくれている。⑨「ゆ・れ・て湘南」(82年)は、桜井一押しの楽曲。ハツラツとした健康美が魅力的だった石川秀美の2ndシングルだ。桜井が捉えた80’s感が全編を貫いたポップロックな1曲となった。⑩「スローモーション」(82年)は、前出の石川秀美と同じく花のアイドル82年組の一人、中森明菜のデビュー曲だ。どこまでも落ちていくような妖しいアレンジによってダークな世界観を描いた繊細な手触りが何とも言えない陰影を漂わせている。ラストを飾るのがアン・ルイスの6thシングルの「グッド・バイ・マイ・ラブ」。なかにし礼作詞・平尾昌晃作曲による和製アメリカン・ポップスの最高傑作と言われている曲だ。原曲のメロディーを生かしつつ、レゲエ的なサウンドアプローチで聴かせたヴァージョンで、どこか時代への郷愁感を感じさせてくれる楽曲に仕上がっている。

以上、簡単に収録曲に触れたが、意外ともいえるカヴァー選曲から窺える1曲1曲の彼らの相対し方が興味深いことが少しはおわかりいただけたと思う。そこには彼らの柔軟なアイディアと多彩な音楽性が満載なのである。そして本作をきっかけに原曲の良さを知るきっかけにもなるはずだし、さらに言えばいかに当時の歌手と、その時代性を見事にマッチさせ、ひとつの作品として構築させた作家たちの美学を痛感させられるという幾重もの楽しみ方ができるのだ。70年代80年代の歌謡曲を自分たち流に解釈した本作は、真心ブラザーズに宿っているロックな心の表われであり、音楽に対する大切な思いを包んだ未来への贈り物なのである。

01.風立ちぬ
(松田聖子/1981年)

02.風になりたい
(川村ゆうこ/1976年)

03.横浜いれぶん
(木之内みどり/1976年)

04.メイン・テーマ
(薬師丸ひろ子/1984年)

05.赤い風船
(浅田美代子/1973年)

06.早春の港
(南沙織/1973年)

07.風の谷のナウシカ
(安田成美/1984年)

08.木綿のハンカチーフ
(太田裕美/1975年)

09.ゆ・れ・て湘南
(石川秀美/1982年)

10.スローモーション
(中森明菜/1982年)

11.グッド・バイ・マイ・ラブ
(アン・ルイス/1974年)

真心ブラザーズ

1989年 大学在学中、音楽サークルに所属する先輩YO-KINGと、一年後輩桜井秀俊で結成。
CX系バラエティ番組『パラダイスGOGO』内の“勝ち抜きフォークソング合戦”に出演、見事10週連続で勝ち抜き、同年9月「うみ」でメジャー・デビューを果たす。「どか~ん」「サマー・ヌード」、「拝啓、ジョン・レノン」など数々の名曲を世に送り出す。
2001年12月21日の日本武道館公演をもって活動を一旦休止する。
休止中、YO-KINGはソロとして3枚のオリジナルアルバムを発表、桜井はロゼッタガーデンのメンバーとして活躍する。
2005年春、約三年半の時を経て活動を再開。
2014年デビュー25周年を迎え、自身のレーベルDo Thing Recordingsを設立、第一弾作品「I’M SO GREAT!」(映画『猫侍』主題歌)をリリース、11月19日には、前作より約2年半振りとなるニュー・アルバムの発表を予定している。

オフィシャルサイト:
http://www.magokorobros.com/

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